心臓がばくばく、ほんとに冗談抜きで口から飛び出そう。
今日は恋する女の子にとってのすっごく大事な行事いわゆる好きな男の子にチョコあげるってゆうあれ。数年前のわたしだったら、こんな行事関係なかったのに。つい1年前に気づいてしまったのだ、あいつへの恋心に。
「あんたさチョコ、あげるんでしょ?照美くんに」なんて親友に言われたけど、ずっと幼なじみだった照美はたぶんわたしのこと恋愛対象に見てない。女としても見てもらえてるのかな。

照美はすっごく美人で髪長くてつやつやで…昔は女みたいってからかわれてたけど、サッカーやり始めてからはすっごくモテるようになった。
それは幼なじみのわたしにとって喜ばしいことのはずだったのに、わたしの心のなかにはモヤモヤとしたどす黒い何かしか生まれてこなかった。はじめてわたしは照美がずっと好きだったんだって気づいた。



それで今わたしの目の前には、頑張ってつくったガトーショコラを渡そうと呼び出した照美が、いる。


「どうしたんだい?呼び出すなんて、珍しい」
「……」
「?」
「あ、のさ…」
「なに?」



うんと、とかえーっととか繰り返してたわたしに「…あててみせようか?」と照美は言って、それじゃないのかい?とわたしが後ろに隠していた可愛くラッピングされた袋に入ったガトーショコラを指差してた。

「と、友達のつくった分の余りだから!ついでだから照美にもあげようかと思って」なんてすごく可愛くないことを言ってしまった。

なのに照美は心底嬉しそうにありがとうと言ってまじまじとそのラッピングの袋を眺める。

…もう、そんな表情好きな子に貰ったときだけにしてよ。期待しちゃうじゃん馬鹿。心臓がきゅうってなって、なんでか分からないけど目からも涙がでそうになって、気づいたら「すき」って言っていた。


「……え、あ…」
「……」
「ごっごめん!今の、忘れて!ほんと何でもないから!」
「…僕も」
「………へ、?」
「好きだ」
「……」
「……」
「う、そ…」
「本当だよ」
「ほんと、に…?」


返事の変わりにぎゅっと抱きしめられた。耳元で愛してるなんてそんな恥ずかしいセリフを言う照美。そんなところも大好きなんだけれど、悔しいからしばらくは言ってあげない。



110219 角砂糖の魔法

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -