「………」
「…ねー、日吉?」
聞いてる?
そう言って俺の顔を覗き込む先輩は、俺の年上の彼女である。…さっきから聞いてはいるが、何故かつい口元に目がいってしまう。
…今日は何かが違うんだ。いつもよりしっとりしていてプルっとしている。しかも何だか甘い香りがする。
聞いてる?って言うたびに彼女は口を尖らせて拗ねたような顔になる。そのたびに俺はその可愛い唇に触れたくなるんだ。いや、正確にはキスしたい、だ。
「先輩、」
「なーに?日吉」
「…キス、してもいいですか?」
「……へ?」
「だから、キス」
やっと状況を理解した先輩は顔を真っ赤にしてから、先輩を壁に追いやって今まさに唇まで数センチという所で手を顔の前に出してイヤイヤをする子どもみたいに首を振った。
「…なんでですか」
「だっだって……」
リップクリームって苦いんだもん!
真っ赤な彼女が睨むように言った。…なんだ、そんなの、
「…キスすれば甘くなりますよ」
「んっ…」
バニラリップ
あまい、あまいバニラ味
101222