もうやだほんとやだ。なんでこんな日に雨なんて降るの。朝あんなに晴れてたじゃない。まるであたしの心のような空だ。今日だけはほんとに神様を恨みたい。今日のことも全部、神様のせいにしたい、なんて思うわたしは馬鹿。ほんとに子供じみてる。


「…何してんの?お前」
「…ブン太に関係ないじゃん」


下校時間にはちょっとはやくて誰もいない玄関。傘もなく帰れなくてぼーっと空を見てたら、幼なじみのブン太が話しかけてきた。幼なじみといっても、もう2人とも成長して小学校の頃みたいに仲良くすることもなくなったんだけど。
ああもう、なんであたしってこういう態度でしか話せないんだろう。もっと女の子らしかったら、可愛らしかったら、あの人も振り向いてくれたのかもしれないのに。


「…あっそ」


なんて言ってブン太は傘もささないでさっさと帰ってしまった。









雨は一向に止まなくて途方に暮れていたとき、バシャバシャと水をはじいて誰かが走ってくる音がきこえた。顔を上げるとあたしはその人物を見て驚いた。

「ブン太!?帰ったんじゃなかったの?ていうかびしょ濡れ!」


タオル、タオルってカバンの中に確か入っているタオルを取り出そうとしているとブン太が傘を出した。


「…え?」
「やる!…何あったか知んねーけどお前に風邪ひかれると困るからよぃ」
「…ブン太…」


なんなのもう。自分こんなびしょ濡れの癖に…ブン太が風邪ひいちゃうよ馬鹿だなぁほんとバカブン太。なんでこんなに優しいの。今のあたしに優しさはキツい。




「…あのね、」


わたしさ、彼氏にふられたんだ。
そう言ったらブン太は困るだろうなんてことは目に見えてたけど、なんだかブン太には素直に吐き出せるような気がした。案の定、ブン太は困ったような顔をして「…そっか」と言いながらも髪を撫でてくれた。何年ぶりだろう、随分手もおっきくなって男の子だ。ブン太の手は雨で濡れてたけどその温もりはあったかい。


「…ありがとね、ブン太」
「いいって!ほら、さっさと帰ろうぜ!」
「…うん。…あ、」


相合い傘?
なんて冗談で言ったのにブン太は真っ赤になって、別にいーだろ!ってそっぽ向いてしまった。そのブン太がなんだか懐かしくて、クスクス笑った。




傘はいつもひとつ
芽生えたこの気持ちといっしょに



101120
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