「ん〜、いい匂いだね〜」
「ちょ、あの、お願いですからどいてください」
ことが起こったのは風呂上がり。恋人である残夏はわたしの部屋にちょくちょくやってくる。今日はタイミング悪くちょうどお風呂から上がったところで来てしまった。
わたしのことを抱き締めながら髪の毛の匂いを嗅いでいい匂いなんて言ってくる。お前はどこぞの変態親父か!
「ボクのこと好き?」
「…?」
急にわたしの肩に残夏の頭がのっかって弱々しくそんなことを聞いてくるもんだから、ちょっと、びっくりした。うんって残夏を抱き返しながらそう言ったらさっきまでの弱々しさは消えていて、何だかにやにやしていた。まさか!
「だっ騙したの!?」
「何のこと〜?」
知らなーい、なんて得意のおとぼけでおどけてみせる目の前のこの男。
「それよりさっきの、ちゃんと言ってほしーなー」
「へ、」
「好き、ってさ。ほら〜ちゃんと言って?」
くいって顎を持ち上げられて至近距離で見つめられる。ああもう、わたしとしたことが騙されるなんて。てゆうか顔近すぎて目合わせられないし唇当たりそう。ん?なんて言いながらわたしが好きって言うのを待っているらしい。
「…す、」
「す〜?」
くそぅ、こいつ絶対馬鹿にしてる!
「…好きの反対!」
「えーそれってキライってことなのかな〜?僕ショックだなあ…ほらぁ、正直に言わないとこのまま襲っちゃうよ?」
「ばっ!この変態!」
「なんとでも〜」
「…言えばいいんでしょ言えば!」
好きの反対、の反対
(うそ、本当はだいすき)
(素直になれないだけなの)
100724
title:確かに恋だった