彼は何時もそうだった。歪んだ性格からなのか、死んだ魚のような目を常時しているからなのか、くるくるな天然パーマで産まれてきたからか。それとも、元々そうだったのか。 彼は何時もそうだった。現れては消え、現れては消える。永遠とそれを繰り返す。しかも現れる時も消える時でさえも、誰にも告げずに存在の有り無しをする。 そんな彼が嫌いだった。へらへらしてて、何を考えてるかわからなくて、でも時々いいように恰好を付ける。嫌いな彼が消える度に泣き、現れる度にどこか嬉しいとおもう自分も嫌いだった。許せない。嫌いな彼をまさか好きになる私が。 「は?」 「銀さんが帰ってきてるんです!」 「銀時が、帰ってきてる‥?」 「そうですよ!」 ほら、またどこかで大喜びしている。こんなに想いを寄せ続けているなんて、全く自分のことながら笑ってしまう。わざわざ私の家に来てまで伝えてくれる新八くんも、知ってか知らずか親切でしてくれたんであろう。というより普通、銀時自身から伝えにこないか? そう自滅するようなことを考える。胸がぎゅっとなる。 やや早歩きで、普段なら20分もかかる万事屋へ向かう。どんどん自分でも歩くスピードが速くなっているのがわかる。私だけ好意を寄せているんだ、と悲しくなった。約一週間前に来た万事屋と、全然変わってない。しかしあの中に銀時居るとなると、胸を焦がす。 「‥お邪魔します」 誰も居ない玄関に挨拶し、居間へと続く廊下を歩く。勢いよく引き戸を開け、ソファーに近付くと、ふらふらする原因のひとつである髪が見えた。向かい側のソファーに移動し、大きくテーブルを叩く。すると銀時はジャンプにあった視線を、ゆっくり私に向けた。眼を合わせると、優柔不断の原因のひとつである眼が見えた。 「よォ」 「何で‥居るのよ」 「帰ってきて、それはねェだろ」 「‥‥‥っ」 堪えてきた涙がすぐ其処まで来ていた。瞬きで涙が出ないように気をつける。こんなに馬鹿なのに、すぐふらりと居なくなって。心配かけるとともに、愛されて。ぐっと涙を出すのを我慢する。ごしごしと目を擦って涙を拭おうとしたとき。ふわり。銀時が抱き締める。‥駄目だよ。そういうの、弱いんだよ。銀時が居なくなってから、そういうのに恋しくなって。そういうのに弱くなった。 「ただいま」 「おかえり」 涙ひとつだけ流したのは、会えた喜び。それもあるけど、きっと『おかえり』を伝えられたから。だからたった一滴だけ流したんだ。 嵐のように去り嵐のように現れる どこにもいかないで、ね −−−−−−−− アニ銀二期おめえええ! 企画:祝宴様に提出 |