「な〜名前ちゃん、今日やけに静かやな。
どしたん?」
隣に座る廉造がそう言って私に絡んでくるが、私は返す元気がない。
本当は塾も休もうかと思った。
でもこれくらいなら我慢できるし大丈夫、と考えて来た自分が馬鹿だった。
つらい。
「…なんでもない。」
そう言って机に突っ伏す。
まだ授業始まるまで時間あるし大丈夫。
ふわっ。
ふいに頭を撫でられ、びっくりして顔を上げた。
「あ、やっとこっち見てくれはった。
なんやねん、今日の名前ちゃんおかしいで?
あれ?顔青ない?大丈夫?」
顔を覗き込まれ、恥ずかしくなってもう一度顔を伏せた。
「ほんとになんでもないったら。」
「せやかて…」
言いかけたところで奥村先生が教室に入ってきて、会話は中断された。
あーあ、こういう時に甘えとけば可愛い彼女なのかな。
そんなことを思いながらぼんやり授業を聞いていた。
「―さん…、苗字さん!」
「名前ちゃん、呼ばれとるで。」
…いつの間に寝てしまったんだろう。
「苗字さんが授業中寝てしまうなんて珍しいですね。
…教科書、読んでもらっていいですか?」
「あ…はい、すみません。」
立ち上がり、一瞬にして視界が真っ暗になった。
あ、目眩だ。
そう思ったときにはもう、体はバランスを崩していた。
「名前ちゃん!!!」
隣の席の彼の声が遠くに聞こえた。