ゆめ | ナノ



あの出来事から2日が経った。私たちは交流旅行を終えて、普段の学校生活に戻っていた。でも、その風景の中にトウヤ君の姿はない。トウヤ君はあの日体調を崩したまま、週末をはさんでも、学校に来ていなかった。



『俺は好きでもないやつにキスなんかしないよ』



あの日トウヤ君に言われた一言が頭から離れなくて。今日一日だけで、何度トウコとベルに心配されたことだろう。なんて考えつつ、思考の端で聞こえた声に、私はまた思考を飛ばしていたんだな、と気がついた。



「なまえ!ちょっと、聞いてるの?!」
「なまえ、なんだかずーっとボーッとしてるね」
「ベルもなまえのこと言えないくらいボーッとしてるけどね。でもアンタは明らかにヘン!」



ビシッとトウコに指差されて、息をのむ。トウコにここまではっきり言われるなんて、久しぶりかもしれない。



「別にヘンじゃないよ。ちょっと考え事してるだけだから」
「その考え事がいけないの。どうせトウヤのことでしょう?」



トウコの言葉に、ベルはただただニコニコと笑っていた。

どうしてトウコには全てばれてしまうんだろう?この場合、ベルもだけれど。

押し黙る私に、トウコは続けた。



「いつ言い出すのか気になってたから言わなかったけど、トウヤのこと、心配なんでしょう?」
「……」
「トウヤのこと、好きなんでしょう?」



その言葉に、私はすごい勢いでトウコを見た。

私は誰にもトウヤ君が好きだって言ってない。なのにどうしてトウコは知ってるの。

驚いたような私の顔に、トウコは一つため息をついた。



「…そんなの見てれば分かるわよ。なまえのことも。トウヤのことも、ね」
「こんなにわかりやすいのも珍しいよね!」
「トウコ、ベル…」



名前を呼びながら二人を見れば、満足げに笑ったあと、トウコは私の手を握って言った。



「協力するよ!可愛い弟と、大切な親友のためだもの!」
「あっ、あたしも!出来るだけのことはするからね!」
「うん。ありがとう、トウコ!ベル!」



二人ににっこり笑いかければ、トウコが満面の笑みで抱きついてきた。



「それより私、二人に本当はトウヤ君と付き合ってないって、言ってたっけ?」
「そんなの見てれば分かるって言ったでしょ」
「うん!なまえを見てれば分かる!」



どんだけわかりやすいの、私



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