ゆめ | ナノ



帰り道を、ヒビキと2人、手を繋いで歩く。そんな当たり前のヒビキと共にいる時間が、楽しくて、嬉しくて、すごく幸せで。こんな日々がずっと続けばいいって、ずっとヒビキと一緒にいたいって、心の底からそう思った。



「先輩、先輩」
「ん?」



ちゅ、



呼ばれてふっ、と顔を向けた瞬間。唇に感じた柔らかい感触に、私は目を見開いた。



「なっ、なっ、なにして…っ!」
「ふふーっ!先輩顔真っ赤ですね!」



びっくりして怒りだす私を見て、からかうみたいに笑うヒビキ。でも私の頭の中はパニックになっていて、冷静に対応することなんて出来なかった。

不意打ちでキスするなんて!

キス、という単語を認識したと同時に、ぐっと涙が込み上げてきた。



「え!先輩、どうしっ…」



急に泣き出した私を見て、ヒビキが慌てて右往左往する。



「先輩すいません。嫌でしたか?嫌いになりました?」



心配そうに顔を覗き込んでくるヒビキに、私は大きく首を振る。

嫌なわけなんてないじゃない。それに嫌いになることなんて、ヒビキを嫌いになるなんて、一生できっこない。



「先輩?」
「違うよヒビキ。違うんだよ」



言いながら、ヒビキの制服のシャツをぎゅうっと掴む。ヒビキはそんな私の頭を優しく撫でてくれていた。



「なまえ先輩」
「私、嬉しくて、嬉しすぎて、もうどうしていいのかっ…!」



そこまで言って、ぐいっと抱き寄せられる。



「…ヒビキ」
「あーもう!先輩可愛すぎるんですよ!」



言ってヒビキは、再び私の唇を塞いだ。



「好き、先輩、大好き。むしろ愛してます!」
「…うん」



そう言って笑って見せた私を見て、ヒビキは驚いた顔をした後、再び私にキスをした。

当たり前のようにヒビキと共にいる時間が、楽しくて、嬉しくて、すごく幸せで。こんな日々がずっと続けばいいって、ずっとヒビキと一緒にいたいって、心の底からそう思う。

…ヒビキには絶対に言ってやらないけどっ。



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