ゆめ | ナノ



「え、どうしたの、それ」
「こっちが聞きたいよ」



朝、ライブキャスターでトウヤに呼び出され部屋に行って見れば、頭に耳を、お尻にしっぽを生やしたトウヤが何食わぬ顔で座ってコーヒーを飲んでいた。



「それ、ゾロアの耳としっぽ?」



見覚えのある灰色の毛と、赤い模様を見てそう問えば、トウヤは静かに頷いた。



「いつからそんなことに…」
「今日の朝にはすでにこんな感じだった」



つまり眠っている間に生えたってことか。まさか宇宙人に連れさられてそんなことに?!きゃとるみゅーてぃれーしょん!



「そんなわけないだろ。お前バカか」
「バカです、すいません」



もはやトウヤに心を読まれるなんて日常茶飯事だから驚かない。



「つーかなまえ、お前食い物かなんか持ってる?」



唐突に言ったトウヤに私はびっくり。まさか透視能力まで持っていたなんて!



「ちげーよ!なんかいつもより鼻がきくんだよ」
「へー本当にゾロアみたいだね」
「最悪…」



大きくため息をはいて、頭を垂れたトウヤに生えた耳としっぽがだらーんと垂れている。

不思議だ。トウヤが可愛く見える。



「可愛いとか思われても嬉しくねーんだけど」
「そんな可愛いトウヤに、はいこれ」
「なにそれ」
「お弁当作ってきてあげたよ。どーせなにも食べてないでしょ?」



それを受け取り、無言でお弁当箱を開いたトウヤは、一言「まずそう」と言った。いつものことだからまあいいんだけどね。でも違うことが一つある。今日のトウヤにはゾロアの耳としっぽがついている。



「トウヤさんトウヤさん」
「なんだよ」
「めっちゃしっぽ揺れてんですけど」
「気のせい」
「いや、気のせいじゃないでしょ」
「黙れ」
「黙れって…むぐっ」



口を開けた瞬間、素早い動きで卵焼きが口に突っ込まれた。そのあまりの甘ったるさに吐き出しそうになるけど、トウヤがすかさず噛み付くようにキスしてきたので、それは叶わなかった。



「うん、うまい」
「トウヤのばか」
「あ?」
「ごめんなさい」




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