「なまえ!」 「ユウキ君?…って何それ?!」 部屋にものすごい勢いで入ってきたユウキ君を見て、仰天する。珍しく帽子を被っていないユウキ君の頭には、見慣れた灰色の耳が生えていた。 「見れば分かるだろ。多分ポチエナの耳」 「ポチエナの耳がなんでユウキ君の頭に?!」 「知るかよ」 ユウキ君は、はあーと大きなため息をはいて唸りながら頭を抱えた。さっきまでピンッと立っていたユウキ君の耳が、落ち込んでいるかのようにペコ、と折れている。 可愛い!! 思わず叫びそうになるのを必死で堪える。そんなこと叫んだりしたらきっとユウキ君は鬼畜化する。それだけは避けなくては。 「なに見てんだよ」 「ひッ!すいません!」 「…チッ」 今、舌打ちされたよね…。 どうやらユウキ君はご立腹のようだ。さっきから機嫌悪そうに腕を組んで、唸っている。あ、今犬歯見えた。 「ていうかなんで俺なんだよ」 「え?」 「普通こういうのって、俺じゃなくてなまえに生えるべきじゃないの?別に俺に生えたところで萌えもなにもないだろ」 「そんなことないよ!」 思わずそう叫んだ私を一瞥するユウキ君。それに一瞬怯むけど、ユウキ君は私の言葉を全く気にする様子もなくにっこりと笑った。 「ふーん。なまえこういうの好き?」 「好き、です」 「萌え?」 「萌えます!」 「じゃあ俺にも萌えさせろ」 「へ、ってぎゃあ!」 言葉とともに首元に噛み付いてきたユウキ君に、私はなんとも女らしくない声で叫んだ。 「ななななな!なにしてっ!」 「ちょっと黙れ」 下から無意識だろうが、上目遣いで見てくるようにそう言われれば、もうなにも言えなくなってしまった。 |