「ただいま」 「おかえり」 ジムから帰ってきたマツバを玄関で迎え、いつもの言葉を言う。マツバがいつも巻いているストールを預かると、マツバは微笑して私の頭を撫でた。 「なんかお腹すいちゃったな」 「あ、ごめん。まだご飯出来てないんだよね」 「…また昼寝?」 「申し訳ないです…」 うっかり寝過ごしてしまったことを伝えれば、マツバは仕方ないな、なんて言いながら笑った。 「今から急いで作るね。その間にお風呂入ってきちゃったら?」 「お風呂はまだいいや。もうお腹と背中がくっつきそうなんだよ」 言いながらソファに寝そべり、テレビをつけてお気に入りのバラエティ番組をかけたマツバに溜め息。 さてさて、お腹がペコペコな旦那様のお腹と背中がくっつかないように、急いで作らないとっ。 質よりスピードということで、簡単に作れるオムライスでいいや、という結論に至った。マツバの舌は意外に子供だし、文句は言わないだろう。テンポ良く材料を刻んでいく。マツバと結婚してから料理も大分手慣れてきたなー、なんて考えていると、後ろから手が伸びてきて、私の腰へとまわった。 「…マツバ。びっくりするからやめてって言ってるでしょ」 「無理。今日の夕飯ってオムライス?」 腰に腕をまわして、顎を私の肩にのせて、後ろから抱きつくように話すから困る。 多分私顔赤い。 「なまえ、手止まってるけど?」 クスクス笑いながら言ったマツバに、私はより一層顔が赤くなるのを感じた。 絶対確信犯だよこの人! 「…マツバの意地悪」 「なまえ限定でね」 「…っ!」 「また照れた?」 再びクスクスと笑い出したマツバに、恥ずかしくなって俯くと、マツバが思い出したように言った。 「そうだ。今日は一緒にお風呂入ろうか。僕が洗ってあげるから」 「もう本当黙って…!」 0804 1万打企画。紅子さんへ title.ポケットに拳銃 |