ゆめ | ナノ



もうどうしたらいいのか分からなくなり、私はただただ泣きじゃくった。トウヤ君のことが、トウヤ君がなにを思って、考えてるのか、全然分からなくて。そんな私を黙って抱えていたトウヤ君だったけど、しばらく経ってからみょうじ、と名前を一度呼んで、私のことを抱き直した。

…お姫様抱っこだ。



「トウ、ヤ君」
「俺もお前が分かんねーよ」



言ってこちらをじっと見てくるトウヤ君に、私は泣いてぐちゃぐちゃな顔を見せたくなくて、俯こうとした。でもそれはかなわなかった。



「ん、んうっ!」



急に唇を寄せられて、キスされる。まるで奪うようなキスに、思考が朦朧としてくる。

ずるいよ、トウヤ君は。こんなキスされたら、気付きたくなかった気持ちに気付いてしまう。

生理的に溢れてきた涙を舌で舐めとったトウヤ君は、また無茶苦茶にキスしてくる。そんなキスが嫌で嫌で仕方なくて、私は力いっぱいトウヤ君の肩を押した。



「なんだよ」
「…やだ」



嫌だ。嫌だ。こんなキスされたら、私は思ってしまう。トウヤ君が私のこと好きなんだって、勘違いしてしまう。だって。



「私のこと、好きでもないのに、キスなんかしないでよ…」



だって、私はトウヤ君が好きだって、気付いてしまったから。



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