ゆめ | ナノ



暗がりの道をケータイのライトを頼りに歩いていく。足場は悪いし辺りは暗いし、すっごく歩きにくい。道を歩きながら、なんで私こんなことしてるんだろうと不思議に思った。



「とりあえず早く行こ…」



落ち込む気持ちを沈めるようにせかせかと足を進める。面倒事と恐ろしいことには触れないのが一番だ。こういうときは無心で進んでちゃっちゃと終わらせるにつきる。



ガサッ



「ぎゃあっ!」



突然の音に驚き、叫び声をあげて退避の姿勢をとろうとすれば、目測をあやまり、水溜りに足をつっこんみ、転んでしまった。足冷たいし、痛いし、暗いし、怖いし、なんだか泣きそうだ。



ガサッ



真剣に泣きそうになっていれば、先程音をたてた木々が再び揺れだした。

なになになになになに。怖い怖い怖い怖い怖い。誰か助けて…っ。
…トウヤ君っ。



「お前なにやってんだよ」
「え?」



聞き覚えのある声に、しゃがみ込んで俯かせていた顔をあげると、怪訝そうに眉を寄せてこちらを見るトウヤ君がいた。



「なん…でいるの?」
「お前の間抜けそうな顔が見られるんじゃないかなーと思って」



そしたらマジで見られたな、なんて言いながらあははーと笑うトウヤ君があまりにいつも通りだから、みるみる内に涙がこぼれてきた。



「なんで泣いてんだよ…」
「…っ、なんでも、ない」
「なんでもなくないだろ」
「なんでも、ない…よっ」



ため息をはいてわけ分かんねー、と言いながら私の頭を珍しく撫でたトウヤ君に、どういうわけか余計に涙がとまらなくなった。




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