ホテルの部屋に入って荷物の整理をしたら、夕食のため1Fのロビーに集合。 トウコが戻ってくる気配は全くない。先生に言われた言葉を思い出し、私とトウヤ君は2人で1Fへむかった。いつもよりやけに静かなトウヤ君が恐ろしい。長い長いエレベーターに、無駄に高層なホテルが憎らしく思えた。 早く、早く。早くついてエレベーター。 そう心で念じながら、階数表示を目で追っていく。ゆっくり下るエレベーターがじれったい。無性にむしゃくしゃして頭をかきむしりたくなるのを必死に抑えていると、トウヤ君がボソッと呟いた。 「…なまえ」 「はい?えっ!?」 名前を呼んだあと、なにを思ったのかトウヤ君は私に覆いかぶさってきた。 「なななななっ?!」 突然の出来事に、頭が対処しきれずに、ただただ両手をじたばた動かした。 「暴れんな」 「うぁっ」 トウヤ君は耳元でそう言うと、私の肩をギュッと抱いた。いつもより覇気のない声、赤い頬、熱い身体、そんなトウヤ君の様子に、私はようやく違和感の正体に気付いた。 「トウヤ君、もしかして…体調悪」 チーン そこまで言って、エレベーターが1Fに到着したことを告げた。そしてエレベーターの扉が開いた。 「あ」 私が扉が開いたのに気付き、そちらに目を向ければ、こちらを見て固まる女子たちの姿。そして次の瞬間には、ホテルのロビーに女子たちの絶叫が響いた。 「…うるさい」 そんな絶叫は、トウヤ君がエレベーターの閉スイッチを押したことで、静寂にのまれた。 |