ゆめ | ナノ



始業ギリギリで教室に滑り込み、席について溜め息をはく。相も変わらず女子たちからの視線が痛い。痛い痛い、いつか急所に当たって死んでしまうんじゃなかろうか。なんてことをボーッと考えていたら、突然背後から凄まじい勢いでなにかが飛んできた。それはモロ私の頭に当たり、あまりの痛みに私は机に俯せになって堪える。まさしく、急所に当たった。そんなときだった。


「先生」


教室によくとおる、涼やかな声が響いた。みんなが一斉に声を発した人を見れば、やっぱり、トウヤ君だった。何事かと思い、彼を見ていたら、私の方を見て、すたすたとこちらに近寄ってきた。


「みょうじさん」
「えっ?ちょっ?!」


トウヤ君は私を立たせると、先生に向き直って言った。


「先生、すいません。みょうじさんが具合が悪そうなので、保健室に行ってきます」


トウヤ君はそう言うと、先生の返事を待たずに教室を出ていこうとする。レッド先生も止める気はないみたい。女子たちは私たちを呆然と見ている。ついに、教室のドアが静かに閉められた。

ていうか、私別に具合悪くなんかないんだけど。


「痛い痛い痛い!トウヤ君!手強く握りすぎ!!」
「え、なに?聞こえない」


こちらを見ずに前だけ見て手をぎゅうぎゅう握っているトウヤ君。周りから見たら私たちはどう見えているんだろう。どこからどう見たってカップルになんか見えないはずだ。


「なに考えてんの」
「なにも考えてなっ…ていうか痛いって!しまいには泣くぞ」
「泣け。いっそ啼け」
「その字はなにか違うと思いますが…って痛い痛い痛い痛い痛い!!」


こんなやり取りをしながら私たちは保健室ではなく、先程グリーン先生と会った屋上へとやってきた。ドアを開け放つと、そこは相変わらずの曇天。でもなぜだろう。トウヤ君の背景に曇天が合わさると、安心するどころか不安が増築されていく気がする。


「みょうじ」


私の名前を呼んで、一拍おきてから再び口を開く。


「お前に聞きたいことがある」


そう言ったトウヤ君に、悪寒がはしった。



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