ゆめ | ナノ



教室に入れば、時間も早かったせいか人も少ないし、数少ない女子ですらこちらを厳しい目つきで見てくるため、私は一人屋上へ向かうことにした。


「はあ…心安らぐ、あの曇天…」


昨日とは対照的な暗くどんよりとした曇り空は、あまりにも彼の爽やかな容姿とかけ離れていて、不思議と心が安らいだ。私はもう末期かもしれない。

それもこれもすべてはあの腹黒ドドドSなトウヤ君のせいだ!くそ大魔王め!!


「誰がくそ大魔王だって?」
「そんなのトウヤ君に決まって…っ!?えええ?!」


突如背後から聞こえてきた声にびっくりして振り返れば、予想外も予想外。そこにはグリーン先生が立っていた。


「なっ、なんで先生がこんな所に!っていうかなんで私の心の声に返事してっ…!」
「全部口から出てたぞー」
「う、嘘…」


トウヤ君にばれていたわけがこんな形でわかるなんて…。ていうか私の心の声、筒抜け?!

呆然とする私を見て、なにかを思い出したようにグリーン先生はにやりと笑った。


「そういやお前、トウヤと付き合うことになったんだって?いやー若いねえ。それにしてもお前みたいなやつがよくあんなの捕まえられたな」
「その言葉。仮にも教師が生徒に言う言葉じゃないと思うんですけど」
「仮にも教師じゃなくてちゃんとした教師だよ。つーかお前こそ、さっきトウヤのこと大魔王とか言ってただろ。それこそ仮にも彼女が彼氏に対して言う言葉じゃねくね?」


グリーン先生の問いかけに、思わず仮にもじゃなくてホントに彼女じゃないんですむしろ下僕扱い!と答えそうになった自分がいて、そんな自分を必死に食い止めて、あははと苦笑いをこぼした。そんな私の顔を見たグリーン先生の顔が微妙に歪んだ。


「お前、大丈夫かよ」
「なにがです?」


平気だとばかりににへら、と笑ってみせると、少しだけ心配そうな顔をしたグリーン先生の顔がどんどん近付いてきた。


「なななななな!何してるんですか!近い!!」


無駄に整った顔が寄せられて、トウヤ君からの熱烈すぎるチューを思い出し、私は一気に後ろに飛びのいた。そんな私の反応を見てグリーン先生はくつくつ笑うと、ポンポンッと左手で私の頭を2回跳ねさせると、にっこり笑って言った。


「そんないい反応してるんだから大丈夫だな!まあ、なにかあったら言えよー。話聞くくらいはしてやるから、な!」


それだけ言って屋上から出ていくグリーン先生を見送ってから、もうすぐ始業の時間であることに気づき、私は急いで教室へと向かった。




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