『なまえ』 キスの合間に囁かれた声が、今も頭に張り付いてる。そのせいか私は昨日、全く眠れなかった。 「なまえ!早く学校行きなさい!!」 「学校行きたくない」 「ばかなこと行ってないで早く行け!!」 お母さんに無理矢理たたき起こされ、頭は寝たまま私は学校へ向かった。 × 「なまえさーん!」 重い足を必死で動かせば、後ろから聞き慣れた声が私を呼ぶ。くるりと振り返れば、幼なじみで1つ年下のヒビキとシルバーが、自転車に乗ってこちらにやってきた。私を呼んだのは恐らくヒビキだろう。 これはしめた! 2人の通行する場所に立てば、ヒビキは停車し、シルバーはなにも言わずに私をよけて通過した。 「ちょっと待てシルバー!!」 「…なんだよ」 そんなシルバーを予想していた私は、シルバーの自転車の荷台を掴むと、思いっきり叫んだ。そんな私を怪訝そうな顔で見ると、シルバーはしぶしぶ停車した。 「アンタ仮にも幼なじみの私を見かけてなにも言わず通り過ぎるってどういうことよ」 「どうせ後ろ乗せてーとかだろ?ヒビキに乗せてもらえばいいだろ」 「それもそうか。ヒビキ、よろしく」 「任せてください!」 「ちょっと待て」 私がヒビキの後ろに乗ろうとしたところで、シルバーが私の腕を掴んだ。私とヒビキがシルバーを同時に見れば、顔を少し赤らめて、俯くシルバーの姿。 「べ、別に俺が乗せてやってもいいんだぞっ」 「え?いいの?」 そう問えば、シルバーは無言でコクリと頷いた。 なにこの子、可愛い。 「でも私もうヒビキの後ろに乗っちゃってるし、降りるのめんどくさいからこのままで行くよ」 そう笑顔で言えば、シルバーは真っ赤な顔をあげて、涙で濡れた目で、キッと私を睨んだ。 ていうかなんで泣きそうなの、この子。 「おっ、お前なんか嫌いだああああああああ!!!!!」 シルバーはそう叫ぶと、ものすごい速さで自転車をこぎ、すぐに姿が見えなくなってしまった。 「いきなりどうしたの、あの子」 「鈍感過ぎるっていうのも考えものですよね」 「どういうこと?」 「とりあえず早く学校行きましょう」 にっこり笑ったヒビキにしぶしぶ頷き、私たちは学校へと向かった。 |