ゆめ | ナノ



帰り道はとにかく無言だった。話そうとも試みてみたけど。


「あのートウヤ君?」
「………」


終始シカトだった。なんなんこの人。コミュニケーション力ゼロか。

トウヤ君に腕をひかれるままに歩いて歩いて歩いて…。

とりあえずこれはどこに向かってるんだろうか?ていうか私のバック、なんでこの人が持ってるの。


「トウヤくん、私のバック…」


後ろからそう言えば、「ああ、忘れてた」と言って、私のバックと自分のバックを私に押し付けてきた。


「えっ?…は?!」
「お前が持つんだよ。当たり前だろ」
「いや、絶対におかしいでしょう!」
「は?」


トウヤくんは横目で冷たく私を見て、「なに言ってんだお前」とでも言うような視線を送ってくる。

とりあえずすごく怖いのですが…。


「みょうじ。お前は俺のなんだと思ってんの?」


言いながら顔をぐいっと近付けるトウヤくんに、不覚にも心臓が高鳴る。だって女の子だもん。


「聞いてんの?」
「んぶっ!」


言葉と同時に頬を両側から挟まれた。必然的に口がタコみたいになる。

は、恥ずかしい…!

必死にもがき、抜け出そうとするが、もちろん離してもらえるわけがない。むしろ必死に抜け出そうとする私の姿を見て、トウヤくんは、それはそれは楽しそうに笑っている。

なんだこの人、ドSか!いや、知ってたけども!


「ぷっ…ぶっさいく」
「ふうー」
「なに?」
「んううー、ふー」
「なに言ってんだかわかんねえよ」


言葉と同時に思いっきり頭をはたかれた。

暴力反対!

痛む頭をおさえていると、トウヤくんがまた顔を寄せてきた。


「お前は俺の」


俺の、その言葉の続きをちょっとだけ期待してしまう。まあ分かりきってることなんだけれど。トウヤくんは顔にうっすら笑みを浮かべて言った。


「下僕、だろ?分かったらこれ、よろしく」


そうして私は2つのカバンを持つことになった。まあこうなるのは分かってたけどね。

神様、私悔しいです。



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