ゆめ | ナノ



開けたドアの先はどこまでも青い青い空だった。授業中の屋上はとても静かで、本来ならとても居心地のいい空間なんだろう。しかし今の私にしたら、いますぐに逃げ出したい空間でしかない。その理由の1つとして、機嫌よく微笑んでいるこの腹黒美少年だ。


「そんなところで突っ立ってないで座ったら?」


フェンスの近くに座り、私を誘導するトウヤくん。私は恐る恐る近寄り、隣に腰掛ける。


「違うだろ」
「ぎゃ!」
「何その声、色気ねーな」


ぐいっと引っ張られて、座らされたのはトウヤ君のひざの上。向かい合うような形に座らされ、私は頬を真っ赤に染める。


「何その反応。かーわいい」
「は、離してよ!」


必死に離してっていうけどトウヤ君が離れてくれる様子はない。

絶対に楽しんでるっ!

ニヤニヤと見てくるトウヤ君から逃れようと必死に暴れるけど、離してくれる気配はない。私のこと罵ったり脅したり、こうやってからかったり、トウヤ君は一体なにがしたいんだろう。


「なに変な顔してんだよ」
「ひょああ!」


言葉と同時に耳に息を吹きかけてきたトウヤ君に、変な声がもれる。そんな私を見て、トウヤ君は楽しそうにくつくつと笑う。


「お前、面白いな」
「なっ?!」
「見てて飽きない」


そうしてふわりと笑ったトウヤ君に不覚にも心臓がきゅんと鳴る。

私絶対におかしい。


「だからせいぜい下僕として俺を飽きさせないように頑張れよ」


やっぱりこの人、悪魔だ。




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