ゆめ | ナノ



「なまえせんぱーい!迎えにきましたよー!」



放課後、グリーンと日直の仕事をしていると、ヒビキがぴょんぴょん跳ねながら、私の席までやってきた。



「ごめんヒビキ。ちょっとだけ待ってて」
「先輩なにやってるんですか?」



私の背後から、ひょいっと手元を覗き込んでくるヒビキに、少しだけ緊張する。緊張しているのをさとられないように、平然を装って答える。



「日直の仕事」
「ふーん」



じゃあ待ってます!と笑顔で言ったヒビキに私も笑顔で返す。

なんかいいなあこういうの。



「ねえ先輩」
「んー?」
「今日どこ行きたいです?」
「んー、とくにないかなあ。ヒビキは?」



私が問いかけると、ヒビキは少し考えるようなそぶりを見せた後、両手を打ってにっこり笑った。



「行きたいっていうか、したいことがあります!」
「ふーん。なにをしたいの?」



私がそう問いかけると、ヒビキは人差し指を立ててウインクして言った。



「ナイショです」



くっそう可愛いな…。なんて思ってませんからね!!



「とりあえずそこのリア充ども、目障りだからもう帰れ」



グリーンが真剣に睨みだしたので、私とヒビキは荷物を持ってそそくさと教室を出た。





×





「で、どこに行くの?」



ようやく街中につき、隣を歩くヒビキの方を見て、私は問い掛けた。ヒビキはとてもとても楽しそうに微笑むと、あるものを指差す。

あれって…。



「ちゅープリ撮りましょ、先輩!」
「無理無理無理。絶対無理!」



撮りましょーよー!と腕をぐいぐい引っ張るヒビキに、私は必死で抵抗する。

だってだって、ヒビキとちゅちゅ、ちゅーとか出来ないもん!



「もーなんでそんなに嫌がるんですかー!先輩、俺のこと嫌いですか…?」



そう問い掛けながらきゅるるん、とこちらを見てくるヒビキに声を詰まらせる。



「…先輩」
「…だって」
「だって?」



手をぎゅっと握りながら、顔を覗き込むようにそう聞いてくるヒビキの目を見ずに、私はぼそりと呟いた。



「…恥ずかしいもん」
「っ!」
「…ヒビキ?」



ヒビキは驚いた顔で30秒ほど固まっていると、はっとしたように私を見つめて、ニッと笑った。



「しょーがないんで、今回はちゅープリは諦めます」



その変わり、プリクラは撮りましょーね!そう言って頭を撫でるヒビキに、きゅんとしている間に、私はプリクラの台の中に引きずり込まれた。



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