ゆめ | ナノ



昨日、私とヒビキは晴れて恋人同士という関係になった。



「というわけで、先輩は俺のカノジョなんで、手出しちゃダメですからね!レッドさん!グリーンさん!」
「………」
「頼まれても手なんか出さねーよ。分かったらほら、早く教室戻れ」
「先輩に言われるならともかく、グリーンさんに帰れとか言われたら意地でも帰りたくないですね」
「お前本当にめんどくさい」



はあー…とため息をつくグリーンを横目で見て、ぎゅうぎゅうと抱きついてくるヒビキに視線をうつす。



「ヒビキあと5分で授業始まるよ。もう教室戻りなさい」
「えー…。先輩と離れたくないですよー。さーみーしーいー。先輩は寂しくないんですかー」
「全然」
「うううー。先輩の愛が足ーりーなーいー!」



そう言いながらわーわーと騒ぎ出したヒビキに慌てて、必死に謝ると、目をこれでもかというくらいにうるうるさせて、こちらを見つめてきた。嫌な予感しかしない。



「じゃあ先輩、今日デートしてくれます…?」



予感的中。
ヒビキめ。これが目的だったのか。



「先輩」
「うー」
「せんぱーい」
「あーもう!分かったから!顔近い!!」



徐々に距離を詰めてくるヒビキの胸板を押しかえしながらそう言えば、ヒビキは何事もなかったかのようににっこりと笑って、素早い動きで私から離れた。



「じゃ、先輩!放課後迎えに来ますね!俺授業始まるんでもう行きます!レッドさんもグリーンさんも、バイビー!」
「ヒビキてっめえ!あとでぶっ飛ばすからな!!」
「ぶふっ!」



グリーンが叫べば、ヒビキは楽しそうに笑って去って行った。レッドは未だ声を押し込めて笑っている。それを忌ま忌ましそうに見るグリーンに、私は話しかけた。



「ねえグリーン」
「あ?!」
「私思うんだけどさ。ヒビキってさ、ときどき腹黒いよね」
「え?今更?」



え?なにその反応。

ぽかんとする私に、レッドが私の頭をくしゃくしゃと撫でながらほほ笑む。



「よかったね」
「…うん」



なにが、なんて野暮なことは聞かない。



「レッド」
「ん?」
「ありがとう」



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