「先輩」 成り行きでヒビキと一緒に帰ることになり、共に通学路を歩く。さっきのことがあったあとだから、なんだか恥ずかしい。それゆえに私はずっと俯いていたのだけれど、ヒビキが顔を覗き込みながら話し掛けてくるので、仕方なく私は顔をあげた。 「なに?」 「手繋いでもいいですか?」 首を捻ったあと、にっこり笑いながらそう言うヒビキに、少しだけ心臓が高鳴る。頷いた私の手を、ヒビキの私より少し大きな手が握った。 「先輩?」 「なに?」 さっきより強く手を握るヒビキの手を、私も握り返した。 「先輩、俺、自惚れてもいいんですか?」 すっと手をひかれて、私とヒビキは立ち止まる。真剣な顔でそう問うヒビキを、私はなにも言わずに見つめるだけだった。 「先輩」 瞬間、手を勢いよくひかれて、抱きしめられる。 「俺、恋人になりたいです、先輩と」 ぎゅううっと抱きしめられて、言われた言葉に目を丸くする。好きだ好きだとは言われていたけど、こんなに真剣に言われたのは初めてだったから。 私も、ヒビキの背中に腕を回して言った。 「先輩が好きです」 「私も好きだよ」 言った瞬間、ヒビキが私の肩を持って身体を離すと、真ん丸の目をさらに丸くして、こちらをまじまじと見た。 「え、まじ?まじですか?」 「うん、まじ」 そんなヒビキに笑いかければ、泣きそうな目をして、また私をぎゅうぎゅう抱きしめてきた。 「うううー!なまえせんぱあーい!俺、一生幸せにしますからね!」 「あーもう、分かったからこんなとこで泣かないで」 道の真ん中で泣き出すヒビキの背中をぽんぽん叩いてそう言いながら、私までなんだか泣きそうになってしまった。 |