その後、ヒビキとレッドをなんとか黙らせ、私とグリーンは2人で空き教室へと入った。心なしかグリーンの顔が青い。まあ抜ける際に、ヒビキとレッドから無言で圧力をかけられてたから、仕方ないっちゃ仕方ないけれど。 「で、話したいことってなんだよ。ヒビキのことか?」 さすが幼なじみ兼親友というべきか。大体の察しはついてるようで安心した。でも、それより先に聞きたいことがある。 「それもあるけど、グリーン」 「あんだよ」 「朝、やけにそわそわしてたよね?もしかしてレッドが来ること知ってたの?」 私の言葉にグリーンは声を詰まらせた。図星、なんだろう。 「なんで言ってくれなかったの?」 「…」 「…グリーン」 「…ああ、分かったよ!言うよ!」 グリーンは半ば自棄になったように言った。 「だってお前、レッドが来たら喜ぶだろーが」 「?…喜ぶに決まってるじゃない」 「そういうことじゃなくて、だからさー!」 グリーンの言い淀む様子などを見て、なるほど。グリーンの言いたいことが分かったような気がする。 「喜ぶに決まってるでしょ。だってレッドは私の初恋の人なんだもの」 そう言い切れば、グリーンは少しだけ悲しそうな顔をした。 グリーンの気持ちはすごく分かる。私は中学の頃、レッドのことが好きだった。そして、私の気持ちがヒビキに傾いていたことに、グリーンは薄々気付いているのだと思う。だからグリーンはヒビキを応援したい。でもレッドはグリーンにとって大切な幼なじみ。きっとすごく複雑、なんだろうな。 でもね、傾いてるだけじゃないんだよ。 「もうね、好きになっちゃったんだよ、グリーン」 グリーンは驚いたようにこちらを凝視した。 「え?は?!…俺!?」 「なに馬鹿なこと言ってんの」 ありえないというようにグリーンを見れば、冗談だよ冗談!と言って笑った。全く…シリアスムードに冗談を持ち込むなんて、どういう神経してるの。でも、お陰で緊張が解れた気がする。 「私ね。ヒビキのことが好きなんだ」 少しの沈黙のあと、グリーンはそうか、とだけ言って、いつものようにニッと笑った。 「…じゃ、そろそろ教室戻るか!」 グリーンの言葉に、私は頷き立ち上がる。そのときだった。ガラッと教室のドアが開き、"彼"が顔を覗かせた。 「レッド…!」 なんでいるの、と聞こうとする前に、レッドは小さく笑って言った。 「そっか。なまえはヒビキが好きなんだ」 その瞬間、頭を鈍器で殴られたような感覚に陥った。レッドに聞かれてしまった。仮にも私を好いていてくれているレッドに。 「レッド、あの…」 「なまえ」 レッドが私の言葉を遮るように名前を呼んだ。顔を上げれば、すぐ近くにレッドが立っていた。 「なまえがヒビキを好きでも、僕はなまえが好きだよ」 だから絶対に僕を突き放したりなんかしないで、そう言って少しだけ寂しそうに笑ったレッドに、なんだかこちらが泣きそうになってしまった。 ああ、もう…本当ずるいよ、レッドは。 |