きのうはあれから、ヒビキと一緒に帰ったけど、バカみたいに意識しすぎて顔なんか見れなかった。とりあえずヒビキを好きになったことを、グリーンには言っておこうかなーと思うけど、結局悶々と考えるだけで、気付いたら朝になっていた。 最悪だ。 そんなこんなで今は学校なのだけれど、未だにグリーンにそのことは言えていない。それどこらか、妙にそわそわしたグリーンに話し掛けることすら、少しだけ気が引ける。 「はい、席について」 うだうだとどうしようか考えていると、担任の先生がやってきてしまった。私は一つため息をついて、ノートの切れ端に『グリーンに言いたいことがある』とだけ書いて、隣の席にポイッと投げた。グリーンはそのメモを読むと、チラリとこちらを見てから、メモをポケットにしまった。これでなんとか話す隙は出来そうだ。私はよし、と小さくガッツポーズをしてから、担任の言葉に耳を傾ける。 「今日はこの時期には珍しいけど、転校生を紹介する」 先生が教室のドアを開いて、転校生が入ってきた。その相手の顔を見て、私は思わず目を見開く。 「…なんで」 教室中の女子たちが彼を見て、歓喜の声をあげる。彼はそれを気にする様子もなく、興味なさそうな瞳で、教室を見回し、私と目が合った瞬間、ピクリと眉を動かした。 「彼は…」 「…なまえ」 先生の言葉をさえぎって、彼は私の名前を呼んでこちらに近付いてくる。咄嗟の出来事に、私は混乱するだけでなにも出来ない。気が付けば、彼は私の目の前まで来て、無言で私に抱き着いてきた。 「…レッド」 私の背後でグリーンが彼の名前を呼んだ。 「なまえ、逢いたかった」 耳元でそう言ったレッド。教室中に女子の悲鳴が響き渡る。それを聞きつけたのか、教室のドアが盛大に開き、ヒビキが顔を出した。 「先輩!無事ですかあああああ!!」 全然全く無事じゃない。 ヒビキはそんな私とレッドの様子を見て目を見開くと、ありえないぐらいの速さでこちらに走ってきて、私とレッドをべりっとひき離した。そのあまりの速さにびっくりして、呆けていると、ヒビキが後ろからぎゅうっと抱きしめてきて、レッドにむかって言い放った。 「この人は俺のなんで、ダメッス!」 ヒビキの発言にまたも女子たちが悲鳴をあげた。ギロリと睨みあう2人に、私はただただ顔を赤くして固まるしかなかった。 |