「これ!借りてたマンガ」 「せせせ、先輩!これを返すためにわざわざ1年生の教室まで?!」 「気分よ、気分!じ、じゃあね」 なまえ先輩から突き出されて受けとったマンガを持ったまま、ヒビキは先輩に向かって両手をぶんぶん振る。 「あー先輩可愛い。大好きすぎるー。…シルバーどう思う?」 「なにがだよ」 「基本ツンツンな先輩が最近デレてくれるんだけど、俺にもとうとう春がきたのかな?」 「お前の勘違いだろ」 とは言ったものの、実際になまえ先輩はヒビキに惚れていると思う。まあ本人は気付いていないみたいだけど。 「お!先輩からメールきたぜシルバー!」 「よかったな」 「おう!また続き貸して。だってさー!」 「いちいち報告しなくてもいい!」 唇を尖らせ分かったと言うヒビキを横目に見て、俺はため息をつく。 世の中には、周りの人間にしか分からないことがある。はたから見たら明らかに両想いなのに、当人たちは全く気付いてなかったり、な。 「ばかだ。正真正銘のばか共だ」 「なんだよ急に。たしかに俺は先輩大好きばかだけどさー」 「あーうるさいうるさい。まじ黙れお前」 「ちぇー、分かったよー。くそシルバー」 言いながらヒビキはケータイをいじりだす。恐らくなまえ先輩へのメールだろう。多分そのうちまた、先輩可愛いーとか叫びだすんだろう。 「あーもう先輩可愛い!今すぐ先輩のこと抱きしめてえ…」 「あー、そうかよ」 「まじ。先輩がいなかったら俺生きられないね、絶対」 じゃあ死ね。なんて思っても言わないあたり、俺も相当なバカだ。 別にコイツと先輩がいなくなったら悲しいだなんて思ってないからな! とりあえず今日も、幼なじみ兼親友の『先輩大好き談義』を聞いてやることにしよう。 |