ゆめ | ナノ



「と、いうわけで!先輩の献身的な看病のおかげで、全快しました!みょうじヒビキです!」
「アンタはいつ私に婿入りしたの…」
「ヒビキ…殺す」
「やめろレッド。そして世界観をくずすな」



私の机の正面に立ち、高らかにそう言ったヒビキに、みんなそれぞれつっこみをいれていく。一人どこから出したのか、赤と白の某ボールを持ち出したレッドを、グリーンが静かに宥める。



「…みょうじレッド」
「ちょっとレッドさん!なに言ってんスか!先輩は俺の物ですよ!」
「私は誰の所有物でもありません」
「そういやなまえ。お前あの日急にいなくなったと思えばヒビキのとこに行ってたんだな」



グリーンの言葉に私はあの日のことを思い出し、顔を赤くする。今思えば、学校を抜け出してヒビキの家に行くなんて、随分と大胆なことをしてしまった。



「なんつーか相変わらずだと思ってたけどさ…」
「?」
「お前…ちゃんと彼女なんだな」



グリーンの言葉に、私はまた赤面してしまう。そんな私に、グリーンは生暖かい視線をむけてくる。すかさずレッドがグリーンにタックルを決めて、グリーンが机にむかって倒れた。



「いってえ!レッドてめえ!なにすんだ!」
「グリーンにむかついた」
「なんでだよ!!」



ぎゃあぎゃあと騒ぎ出すレッドとグリーンに、私は苦笑いを浮かべる。それからヒビキに視線を移し、私は目を丸くした。



「え?ちょっ。どうしたのヒビキ」



ヒビキは目をうるうるとさせ、涙をこらえていた。私は慌てて立ち上がり、何事かと問う。



「ヒビキ?」
「俺、嬉しくて…ちゃんとみんなにラブラブカップルに見えてたみたいで…」
「いや、ラブラブとは言ってないけど…」
「俺ちょっと心配だったんですよ。先輩は俺がしつこいから付き合ってくれたんじゃないかって…」



自覚あったのか…。じゃなくて。
私はヒビキの左手と自分の右手をつなぐと、ヒビキの目にハンカチをあてながら言った。



「大丈夫だよ。だって私も、ヒビキのこと、ちゃんと、大好きです…から」



そう言ってそろそろとヒビキを見れば、ヒビキは顔を真っ赤にして、私を見ていた。そしてしばらく間が空いてから、バッと私に抱き着くと、耳元でこう言った。



「俺だって、先輩が大好きですよ。世界でいちばん」



そんなこと、そんな嬉しそうな声で言われたら、なんにも言えなくなってしまうじゃないか。顔を赤らめ、どうしたらいいか分からなくなった私は、ヒビキの肩にぐりぐりと頭を押し付けた。



「先輩かわい…痛ーっ!!」
「イチャイチャするのは結構だが…」



ふいにヒビキの頭にげんこつが落ち、聞き覚えのある声が聴こえた。その痛みに悶絶するヒビキを見下ろして、げんこつをした人物、シルバー君がため息をついた。



「場所を考えろバカ。放課後とはいえ教室だぞ」
「くう…っ!だって、先輩がかわいすぎるのが悪いんだ…!しかも誰もいないから別にいいだろー!」
「俺が良くない。だから早く帰れ」



しっしっと手で払うようなしぐさをとるシルバー君に、ヒビキは観念したのか、私の手を取って、私を立ち上がらせた。



「それじゃ帰りましょう。先輩」



夕陽を背負ってほほ笑むヒビキに、私は笑顔で頷いた。



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