ゆめ | ナノ



※ちょっと注意





ぽちゃん、と水が落ちる音が浴室に響く。入浴剤で白く染まったお湯を、なんの意味もなく、手の平で揺らし、私はため息を落とした。あれからトウヤは、一言ごめん、とだけ言って私から離れると、すぐにソファに座り、何事もなかったかのようにテレビをつけた。一方、私はといえば、謝ったときのトウヤの顔が、声が、頭に張り付いて離れなくて、トウヤは普段どおりなのに、自分だけこんなに掻き乱されてるのが許せなくて、トウヤに向かってスリッパを投げつけて、浴室に逃げ込んだ。



「なんで私あんなにガキくさいことを…」



今思えば本当に馬鹿な行動だと思う。再びため息をつくと、両頬を両手で叩いて、浴室を出た。





×





「…寝てる」



リビングに戻ると、まさかもういないだろうと思っていたトウヤが、ソファに寝転んで眠っていた。いつもの生意気そうな瞳も、今は閉じられ、無邪気な顔で眠っている。



「…眠ってれば可愛いのに」



眠っているトウヤに近付いて、その寝顔を覗き込む。長い睫毛と白い頬が羨ましい。喋らなければ、それこそ普通の女なんかよりも綺麗なんじゃないかと思う。でも違うんだ。低い声だとか、広い背中だとか、抱きしめる腕の力強さとか、それら全てがトウヤは男だって物語っていて、そしてそんなトウヤは私のことが好きで…。



「…!」



そこまで考えて、一瞬で顔が熱くなるのが分かった。せっかく忘れかけていたのに、また思い出してしまった。頭から消し去ろうと、いやいやと首を振る。



「…冷た」



首を振った勢いで、髪についた水滴がトウヤに落ちて、トウヤが瞳を開いた。それに動揺しつつも、私は平常を装ってトウヤに声を掛けた。



「ごめん。起こしちゃったね」
「んー。…なまえ」
「なに?…えっ?!」



突然の出来事に、マヌケな声をだして、今の状況を整理する。名前を呼ばれ、トウヤと視線を合わせると、急に腕をひかれ、視界が反転した。トウヤは今、私の上に乗ってこちらを無表情にじっと見つめている。



「あの…トウヤ…」
「…むかつく」
「え?…んっ!」



突然トウヤに唇を塞がれ、私は目をギュッと閉じる。頭の中にはどうしてとか、なんでとか、疑問ばかりが浮かぶ。その間にも、重ねた唇が離れることはない。息苦しくなり、唇を開けば、待っていたとでもいわんばかりに、トウヤの舌が私の咥内に侵入してきた。



「ん…ふぅっ」



トウヤの舌はまるで生き物のように、私の咥内を荒らし、呼吸を奪っていく。舌を絡められ、歯列をなぞられ、身体の力が抜けて、トウヤにされるがままにされる。生理的に流れた涙を、トウヤが自然な流れで舐めとり、さらに下へ下へと下がっていく。



「…あっ」



唇が私の首筋あたりに到達したとき、トウヤが私の胸に手をかけた。抵抗したいのに抵抗できない。力が入らない。どうしよう、と分からなくなってしまったとき、自然と涙が溢れた。そんな私を見て、トウヤは一つため息をつくと、私の上からのいて、私を見下ろすように立ち上がると、言った。



「ごめん。もう俺、我慢出来ない。これ以上近付かれたら、もう止められない。俺はお前が好きだから。…だから、俺を好きじゃないのなら」



もう俺に近付かないで。



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