ゆめ | ナノ



もし、もしも。



「今すぐ死んじゃうって状況になったらどうする?」



何も考えずに、唐突に周りにいた2人に問い掛ければ、一人はバカにするような目でこちらを見、もう一人は真剣そうな顔でこちらを見た。



「先輩、死んじゃうんですか?!」
「いや、死なないからね!なんとなく!もしもの話だから!」
「なんだよ急にそんなわけのわからない質問してきて、とうとう頭爆発したか?」
「グリーンは3回死ねばいい」
「爆発してるのはグリーンさんのウニ頭でしょ?」
「よーしお前らそこに並べ。今なら平手打ちで許してやる」



腕を組んで立ち上がったグリーンを無視して、私はヒビキの方を向く。



「で、ヒビキはどうする?」



真剣な顔で問い掛ければ、ヒビキは少し考えるそぶりを見せてから、答えた。



「だめですね」
「なにが?」
「いくら考えても、先輩に会いに行くしか答えが出てこないです」



その答えに、思わず顔が赤くなる。真剣な顔でなんてことを言うんだろう、ヒビキは。



「死ぬなら最期まで、先輩と一緒にいたいし、先輩の顔見たいです。それに最期だったらチューしても先輩許してくれるんじゃないかなーなんて!」



ヒビキの言葉に思わず泣きそうになる。まさかあの短時間でそこまで考えてたなんて。まあ、チューはしないけど。



「でも俺が死んだら先輩泣いちゃうかもしれないからなー。やっぱり死ねないっスよ!」
「それじゃあ質問の答えとズレちゃうよ?」
「ああ、そっか!」



ヒビキは思い出したようにニカッと笑ったあと、でも…と言葉を続けた。



「俺思うんですけど。たとえ俺が死んでも、先輩が生きてるかぎり、俺は先輩のこと絶対に見つけると思うんですよね!」
「なに言ってんのよ」
「本当ですって!俺、何度でも好きになる自信ありますよ」
「え?」
「先輩のこと、何度だって見つけるし、何度だって好きになりますから」



そう言ってヒビキはにっこりと笑って、私の手を握った。

なんでだろう。ヒビキならそんな非現実的なことだって、実現させちゃうような、そんな気がした。




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