ゆめ | ナノ



トウヤの突然の行動に、私は驚きを隠せなかった。私より幾分か大きな身体が、私を強く抱きしめ、身動きがとれなくなってしまった。



「トウヤ。苦しいよ…」



本当はそんなに苦しくなかったけれど、このままじゃ全てがおかしくなりそうで怖かった。認識していなかった事実までも、認識してしまいそうで、怖くて仕方なかった。私はあまり効果がないと分かっていながらも、トウヤの身体を押し返した。



「やだ、離さない」



それなのにトウヤは離すどころか、先程より強く私を抱きしめた。ぎゅっと締め付ける腕に、心臓が握られるように痛い。さらに、トウヤの不可解な行動は、私の涙腺までも狂わせた。溢れ出した涙が、頬を伝わずにトウヤのシャツを濡らした。こんなに近くにいるのに、トウヤの考えてることが分からない。今だって、頭に浮かぶのは昼間の女の子の顔だけで…。



「…なまえ」



私の嗚咽だけが響く部屋の空気を、トウヤの低い声が揺らす。トウヤは少しだけ私から離れると、ゆるく指で頬を撫で、柔らかく微笑んだ。



「なまえ、俺のこと好き?」



トウヤの言葉に私は目を見開いた。



「…わかんないよ」
「じゃあ言わせてもらう。俺はなまえが好きだよ」



その言葉に目を見開く私に、トウヤは無言で口づけた。その間も頭の中にはトウコと呼ばれた女の子の顔が浮かんでいたけど、唇に当たる柔らかい感触が嬉しくて仕方なくて、私は目を閉じた。



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