ゆめ | ナノ



トウコをなんとか説得し家に送り、家に帰ってきたのはあれから6時間後だった。早く戻ると言ったのに、まさかこんなに時間をくってしまうとは。トウコを宥めてる間も、あんな顔で俺を見送ったあいつが心配で仕方なかった。あの時、あいつはどんな気持ちだったんだろうか。



「ただいま」



小さな音をたてて、リビングのドアが開かれる。すっかり陽が落ちてしまった家の中は、月に照らされて薄暗かった。



「なまえ?」



いつもならこの時間、なまえはリビングにいるはずだ。それなのに、一体どこへ…。
そこで、ふと誰かの呼吸音が聞こえ、その音の元へと耳を澄ました。



「…見つけた」



なまえはソファに座り、ゆっくりと肩を上下させていた。そのまぶたが心倣しか赤い。頬にはうっすらと涙の跡が伝っていた。
もしかして、泣いていたんだろうか?
なまえの隣に座り、頬を撫でると、閉じられていた瞳が開かれ、俺を写した。



「トウヤ?」
「うん」
「…おかえり」



そう言うと同時に、なまえは泣きそうな顔で笑った。その表情を見て、耐え切れなくなくなり、俺はなまえの細い身体を抱きしめた。



「っ、トウヤ?!」



もう我慢なんてしてやるか。



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