視界がぐらぐらして、頭が真っ白になって、気付いたら私はベットの上だった。 × 「せーんぱいっ」 ぼんやりとした思考の中、聞き慣れた声がして、私は声のする方へ顔を向けた。 「顔近い離れろ」 「嫌です」 顔を向ければ、わずか5cmくらいの距離にヒビキの顔があって、全力で恥ずかしいからやめてほしいのだけれど、にこにこと邪気のないかわいらしい表情で私を見るものだから、それ以上やめてとは言えなかった。 「で、どうして私はここに…?」 「覚えてないんですか?」 ヒビキが心配そうにこちらを見てくるのを見て、ふとある光景が頭に浮かんだ。 サーブの瞬間揺らいだ視界。ぼやけていく思考の端で、ヒビキが私を呼ぶ声がする。倒れる直前に誰かに抱きとめられて、抱きとめた人物が心配そうな目でこちらを見る。そうだ、私を抱きとめた人物は…。 「先輩、顔赤いですよ」 「うううるさいっ!」 「だから無理するなっていったのに」 「余計なお世話よ!」 そう言って私は勢いよくベッドにもぐった。 「せんぱーい」 「なによ!」 「今日の俺、かっこよかったでしょ!」 布団の端からチラリと見れば、ヒビキがにこにことこちらを見ていた。 「ばかヒビキ」 かっこよかったよ、だなんて。言えるわけないじゃないっ。 |