ゆめ | ナノ



すやすやと安心しきったように眠るなまえに、少しだけイライラした。



「ったく。こっちは色々ギリギリだってのに、コイツは…」



今の俺は情けないの一言に尽きる。学校では1番のイケメンだなんて言われて、沢山の女に告られて。沢山の女に言い寄られるばかりの俺が、一人の女にこんなにも翻弄されるなんて。しかも、その相手が義理の姉、だなんて。バカげてるとしか言えない。そんな自分が情けなくて、深いため息をついた。



「ん…とう、や」
「…っ!」



でも、まるで確かめるみたいにギュッと握られたシャツだとか、胸に寄せられた頬だとか、ふいに呼ばれた名前だとか、そんな小さなことが嬉しくて、愛しくて。



「これぐらい許せよ」



言って閉じられたまぶたにキスをする。シャツを握る手が離れる気配はない。俺は大きなあくびを一つすると、なまえを抱き上げて自分の部屋のドアを開けた。もし部屋にいる理由を問われたら言ってやろう。



「全部お前が悪いんだからな」



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