鳥の囀りが聞こえ、私は重たい瞼をゆっくり開けた。昨日はどうやら、そのまま眠ってしまったみたいだ。とりあえずお風呂に入りたい。そう思い、身体を起こそうとして、身体が動かないことに気付いた。動かないというか、動けないと言った方が正しいかもしれない。なにかに締め付けられている感じがする。 「…ん」 なにに締め付けられているんだろうと、顔を上げてみれば、至近距離にある、トウヤの綺麗な顔。それに驚いて叫ぼうとしたけれど、まだ早朝ということや、トウヤが幸せそうに眠っているので、私はすんでのところで、叫ぶのを抑えた。 っていうか、これって一体どういう状況ですかね?一応昨日トウヤに抱きしめてもらって、寝ちゃったとこまでは覚えてるのだけれど…。 不思議に思い、周りを見渡せば、ここはトウヤの部屋のようだ。 なんで私、トウヤの部屋で寝てるの…? 「ん。…なまえ?」 するとトウヤが目を覚まし、ゆっくりと瞳を開く。ぼんやりとした瞳で私を見つめると、なにを思ったのかトウヤはそのまま私をぎゅうっと抱きしめてきた。 「な、ちょ、えっ!」 「…あったけ」 ダメだこれ。完全に寝ぼけているみたいだ。 どうやらトウヤは寝ぼけると、誰彼構わず抱きしめるらしい。その対象が今は私である、それだけのことなんだけれど。 「…トウヤ?」 「んー?」 「トウヤくん離れてくださーい」 「んー」 なにこれ。可愛すぎるんですけど。 ぎゅうっと抱きしめて、私の髪に顔をうめるトウヤの、いつもの生意気な様子とは違った一面が、可愛すぎて、私もトウヤの背中に腕をまわしていた。 「トウヤ起きないの?」 「んー」 「もう9時だよ」 「…寝る」 それだけ言ってまた寝息をたてはじめたトウヤに、私は笑うしかなかった。今日は土曜日だ。久々に朝寝坊をするのもいいかもしれない。 |