ゆめ | ナノ



「シルバー見ろ!あれ!」
「…なんだよお前。いちいちうるさい」
「俺の先輩が!ちょっ…やばい俺、テニスボールになりたい!!」



先輩が試合しているところを、フェンスの向こう側からシルバーと一緒に眺める。今日の天気は快晴!絶好の球技大会日和だ。得点を決めて友達と喜ぶ先輩を見て、俺の顔も自然と綻んだ。



「やっべーよシルバー。先輩ちょうちょうちょーう可愛いんだけど!」
「ああ。よかったな」
「でもお前には渡さないからなー」
「別にいらな…ていうかお前のものじゃないだろ」
「いーんだよ!俺の未来のお嫁さんなんだから!」



そう言って笑った俺にシルバーはまるでもう聞きあきたとでも言いたげに溜息をこぼす。実際そう思ってるんだろうけど。まあ事実なんだから仕方ない。



「おい、ヒビキ。先輩のサーブだぞ」
「せんぱあああああい!先輩!がんばってくださあああああい!!」
「…まじうるせえ」
「あ!先輩こっち見た!やばい!先輩かわいい!」



先輩にむかってぶんぶんと手を振れば、ちょっと照れたように顔をふいっとそむけられた。そんな仕草だって可愛くて仕方ない。



「あれがどう見たら照れてるように見えるんだ?」
「愛の力に決まってんだろ!」
「そうかよ」
「あ!先輩がまたサーブ…」



そこまで言って、俺は先輩のいるコートへ走り出した。後ろでシルバーがなにか叫んでるけどそんなのどうだっていい。先輩が白いボールを真上に高く投げた。ラケットを頭まで上げて、インパクトする直前。



「なまえ先輩!」



先輩の身体はふらりと揺れ、その場に倒れていった。



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