ゆめ | ナノ



「よーし作るか」



トウヤがテレビを見てるのを尻目に、私はエプロンを身につけて、夜ご飯の準備をする。



「ちゃんと食えるモン作ってね、おねーちゃん」
「分かってるわよ!」



いちいち茶々を入れてくるトウヤにつっこみ、私はざくざくと野菜を切っていく。リビングからは楽しそうなバラエティー番組の音が聞こえてくる。にんじんを切りながら、自分以外の誰かがいる中でこうやって料理をするのって、幸せなんだな、と改めて実感。



「手止まってるけど?」
「っ!?」



いつの間に隣にきたのか、突然のトウヤの登場にびっくりして、肩を揺らす。そんな私の様子にトウヤはくつくつと笑うと、私の頭にポンポンと手を乗せた。



「あんまりボーっとしてると、手ぇ切っちゃいますよ?なまえさん?」
「う、うるさい!そんなドジしませんよ!」
「はいはい。どっちが年上なんだか分かんねーな」



それからもトウヤは、ずっと隣で料理の工程を見ていて、茶々を入れてきたり、文句を言ってきたり、楽しそうに私をからかっていた(本当に生意気な義弟だと思う)そんなことを繰り返している内に、トウヤ好みの甘口カレーは完成した。



「はいトウヤ。運んで」
「なんで俺が」
「いいから運びなさい?」



にっこりとお皿を差し出せば、トウヤは苦笑いしながらしぶしぶお皿を運んでいく。ついでに作ったサラダもテーブルに綺麗に並んだところで、椅子に座って両手を合わせてあいさつ。



「いただきまーす」
「いただきます」



美味しいとは言ってくれなかったけど、トウヤはカレーを完食していた。トウヤがお風呂に入っている間、空のお皿を見て満足した私の頭の中は、明日は何を作ろうかでいっぱいだった。



『明日、○○地方は、昼間は晴れますが、夜は激しい雷雨が襲うでしょう。みなさん外出には充分注意してください。さて、次は〜』



テレビのアナウンサーが言った言葉なんて、今の私には聞こえなかった。



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