「げっ!」 「おい、げっ!ってなんだ、げっ!って」 朝一番、部屋から出た瞬間に遭遇した、義弟トウヤに私は顔をしかめた。あの初対面の日以来、私はトウヤが苦手である。 「つーかお前、寝起きぶっさいくな!」 「うるさい。余計なお世話」 そんなトウヤを無視して一階に下りれば、笑顔のお母さんが朝食を用意して待っていてくれる。 「おはよう、なまえ」 「おはよう、お母さん!」 ずっと憧れていた光景。ずっと憧れていたお母さんという存在。最近はずっと、こんな日常に幸せを感じる毎日です。 「おはよー母さん」 「おはよう、トウヤ」 本当、この義弟がもっと可愛ければ、もっと幸せだったんだけどなー。なんて考えながら私はトーストをかじる。じっとりとトウヤを見つめれば、不審そうな顔をして、こちらを睨み返してきた。 「お前なんか今失礼なこと考えてねえ?」 「考えてない。学校行ってきます」 このままだとなんだか追及されそうだったので、私は急いでカバンをとって退散する。 「じゃあ俺も行こーっと。じゃあ母さん、いってくる」 「2人ともいってらっしゃい。あ、トウヤ。4日間お家のことよろしくね」 「わあってるよ。いってきまーす」 「お母さん、いってきまーす」 成り行きで2人で家を出ると、私はトウヤに問い掛ける。 「ねえ、4日間よろしくってなにをよろしく?」 「さあなー。あとなまえ、お前寝癖ついてる」 「え?嘘!」 「嘘。あんまりボーっとして遅刻すんなよな」 さらりと髪を指で抄いて、ニヤリと笑ったトウヤに少しだけ見とれてしまったなんて、一生の不覚だわ。 |