ゆめ | ナノ



「お前もやれば出来んじゃん」
「まあね」



あれから1時間程でトウヤは帰ってきた。私はというと、その1時間、ただただ無心でゴミをまとめ、雑誌を縛り、床をほうきではいて、部屋の片付けを終わらせた。そのおかげで、部屋は綺麗になり、大分生活しやすくなった。



「疲れたー。久々にこんな動いたよー」
「自業自得だよ。ま、動いて少しは痩せんじゃね?」



なんて言いながら一息つく私に、トウヤはそう言って、私のお腹をつまむ。仕事と家をダラダラと往復するだけの毎日を送る私の腹は、見事にたるんでいた。



「フッ…でぶ」
「うっ!…るさいよ!全く。自分が痩せてるからって…」
「俺が痩せてるんじゃなくてお前がでぶなの。まあ見てろよ。お前の食生活、俺が見直してやるから」



なんて言ってニヤリと笑ったトウヤに、私は疑いの眼差しを向ける。



「とか言って、本当は料理出来ないとかじゃないでしょうね」
「お生憎様。料理は得意なんだよ。伊達にヒモとして生活してないからな」
「それ、誇るところじゃない…」











「おいしい」
「当たり前だろ。俺が作ったんだから」



綺麗に片付いた部屋の真ん中。小さなテーブルに並ぶトウヤの手料理。意外や意外。その全てがとてもおいしくてしかもヘルシー。私は思わず感嘆してしまった。目の前でドヤ顔をするトウヤを華麗にスルーして出されたサラダをもしゃもしゃと食べた。黙々と食べ続けていると、じっと見られているような感覚を覚え顔を上げると、トウヤが頬杖をつきながらこちらをじっと見つめていた。



「なっ、なによ」
「んー?うまそうに食うなーと思って」
「いいからトウヤも食べなよ」
「おう。いただきます」



なんて言いながら、トウヤはずっと、私が食事をしているところをなんだか嬉しそうに見ていた。



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