「お前もやれば出来んじゃん」 「まあね」 あれから1時間程でトウヤは帰ってきた。私はというと、その1時間、ただただ無心でゴミをまとめ、雑誌を縛り、床をほうきではいて、部屋の片付けを終わらせた。そのおかげで、部屋は綺麗になり、大分生活しやすくなった。 「疲れたー。久々にこんな動いたよー」 「自業自得だよ。ま、動いて少しは痩せんじゃね?」 なんて言いながら一息つく私に、トウヤはそう言って、私のお腹をつまむ。仕事と家をダラダラと往復するだけの毎日を送る私の腹は、見事にたるんでいた。 「フッ…でぶ」 「うっ!…るさいよ!全く。自分が痩せてるからって…」 「俺が痩せてるんじゃなくてお前がでぶなの。まあ見てろよ。お前の食生活、俺が見直してやるから」 なんて言ってニヤリと笑ったトウヤに、私は疑いの眼差しを向ける。 「とか言って、本当は料理出来ないとかじゃないでしょうね」 「お生憎様。料理は得意なんだよ。伊達にヒモとして生活してないからな」 「それ、誇るところじゃない…」 * 「おいしい」 「当たり前だろ。俺が作ったんだから」 綺麗に片付いた部屋の真ん中。小さなテーブルに並ぶトウヤの手料理。意外や意外。その全てがとてもおいしくてしかもヘルシー。私は思わず感嘆してしまった。目の前でドヤ顔をするトウヤを華麗にスルーして出されたサラダをもしゃもしゃと食べた。黙々と食べ続けていると、じっと見られているような感覚を覚え顔を上げると、トウヤが頬杖をつきながらこちらをじっと見つめていた。 「なっ、なによ」 「んー?うまそうに食うなーと思って」 「いいからトウヤも食べなよ」 「おう。いただきます」 なんて言いながら、トウヤはずっと、私が食事をしているところをなんだか嬉しそうに見ていた。 |