なにも考えずに家においでなんて、言うんじゃなかった。玄関のドアを開けた瞬間後悔した。 「なんつーか…、俺の知ってる女の子の部屋はこんなんじゃなかった」 「まぎれもない女の子の部屋です。すみません」 直球でモノを言うトウヤの言葉がぐさりと刺さる。しかしここまで言われても仕方ない気がする。一人暮らしに慣れすぎた私の部屋は、見るも無惨な姿になっていたからだ。 「つーかなんだよ、この大量のコンビニ弁当。自炊をしろ、自炊を」 「だって、仕事終わったあとだと疲れてなにも出来ないんだもん」 なんて言葉は、言い訳にすぎない。最近の私は、仕事が終わると、めんどくさいを理由に自炊をせず、コンビニ弁当と缶チューハイを呑みながら、お笑い番組を観るという干物な生活を送っている。 「お前、なんにも変わってねーな」 「トウヤにだけは言われたくないんですけど」 そう言えば、楽しそうに笑ったあと、私の汚い部屋を見やった。 「とりあえず、掃除すんぞ」 「手伝ってくれるの?」 「は?お前がやんだよバカ」 まるで当然とでも言うようにそう言うと、トウヤは軽く私の頭を叩き、私の頭を叩いた手を、私に差し出した。 「なにこの手」 「夕飯の材料買ってくるから財布寄越せ。どうせ冷蔵庫ん中、酒くらいしか入ってないだろ」 飯なら俺が作ってやるから。なんて、得意げに笑ってみせたトウヤに呆れながらも、私は財布をトウヤに手渡した。 「じゃ、いってくる。部屋片付けとけよー」 「分かってるよ。いってらっしゃい」 パタンと閉まったドアを見て、私はため息をつくと、部屋を見回して再びため息をついた。 よし、やるか。 |