ゆめ | ナノ



久々に会った彼があまりに変わっていないので、私は驚くでもなく、喜ぶでもなく、ただただ呆れてしまった。



「トウヤ、今なにしてるの?」
「なにも」
「なにも?働いたりとか」
「考えたこともないよ」



にっこり笑ったトウヤにため息をつく。最後に会ったのは高校の卒業式だった。あの時も同じことを言って笑っていた。



「あー。つーかまじどうしよう」
「どうしたの?」
「さっきいた奴らの家に住んでたんだよね、俺」



家無しだし、一文無しだし、俺やべえじゃんどうしよう。なんて言いながら、全く気にしていないとでもいうようにハハハと笑うトウヤに、私はため息をついた。



「これからどうするの?」
「またその辺でテキトーな女つかまえるわ」



欠伸をしながらけだるげにそう言ったトウヤに、私は苦笑するしかなかった。

本当になにも変わっていない。高校生の時だって、今だって、私は傍にいたのに、トウヤはいつもそう。私を頼ることは絶対にない。



「じゃ、俺行くわ。助けてくれてありがとな」



ポンポンと私の頭を撫で、くるりと振り返るトウヤ。

どうしよう。また行ってしまう。あの頃、私はトウヤが好きだったんだ。好きだったのに、止められなかった。トウヤを手放してしまった。もう、あんな思いをするのは、嫌だよ。



「…なまえ?」



トウヤが怪訝そうにこちらを見る。私はそれに怯みながらも、ぎゅっと握った服を離さずに言った。



「だったら私のところに来ればいいよ」



俯いて、服を掴むだけの私に、しばらくたってからトウヤは、私の頭を撫でながら言った。



「じゃあ、そうする」



その声音が少しだけ嬉しそうだったなんて、どうか気のせいじゃありませんように。



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