日曜日、トウヤ君の部屋で、私たちはいつものようにお家デートをする。でも、おかしい。なにがおかしいって、トウヤ君の態度もそうだし、私たちの関係も、全ておかしい。 「コーヒー」 「はい!」 「暑い」 「はい!うちわ!」 「めんどくさい。扇げ」 「はいい!」 いつも通りの私とトウヤ君の日常。それなのになにかがおかしい。っていうかいつもおかしいのだけれど。私たち、付き合ってるんじゃなかったっけ? 「おい、手止まってる」 「すいません」 パタパタを扇ぐのを再開して、再び考えはじめる。恋人同士って普通、お出かけしたり、手を繋いだり、たまにキスしたり、二人でいられるのが嬉しくって仕方ない!みたいな、そういう関係をいうものじゃないの? 「また手止まってる」 「はい!」 なんだかこの会話、付き合う以前と全く変わらない気がするんだけど、…私の気のせい? 「不服ならもっと可愛がってやるけど、なまえ?」 「すいません。結構です!顔近い!近い!」 不満げに顔を歪めてこちらに近付いてくるトウヤ君の顔を必死で押し返す。たしかに、付き合いはじめてから名前で呼んでくれたり、たまに手を繋いでくれたり、時々だけどキスしてきたりだとか、ちょっとずつ恋人らしくなってきたんだと思う。でも、やっぱり不満がひとつ。 「ねえ」 「ん?」 「私のこの酷い扱いは変わらないの?」 問いかける私に、トウヤ君はまるで当然であるかのように頷いてから言った。 「当たり前だろ。お前は可愛い可愛い彼女であると同時に、愛しい愛しい下僕でもあるんだから。な」 にっこり笑ったトウヤ君を見て、身震いすると同時に彼らしい笑顔に、私は安心してしまった。 「まあ、なんだかんだでこれからもよろしく。下僕として」 「はいはい。分かりました」 「なまえ」 一つ、私の頬にリップ音を鳴らしてから、トウヤ君はいつかと同じ笑顔で言った。 「好きだよ」 微笑む顔は、王子様。 企む顔は、大魔王様。 かっこよくて、いじわるで、だけど時々甘ったるい。不敵で無敵な愛しい愛しい私の彼氏様。 そんな彼との下僕的ライフは、まだまだ終わらないようです。 |