ゆめ | ナノ



下僕から、晴れて恋人同士になったその日の週末。私とトウヤ君は初デートをすることになった。場所はデートの定番でもある、某夢の国。当日の服装も一週間前から決めて、どんな髪型にしようかなとか、お揃いのキーホルダーとか付けたいなとか、行く前から一人でわくわくしていた。だから当然のように、トウヤ君も楽しみにしていると思っていたのだ。



「まじで行きたくねえ…」



会った瞬間言われた一言に、私は一瞬固まってしまった。



「え、なんだって?」
「だから行きたくねえって」
「え?」



本気で怠そうにしてそう言うトウヤ君に私は固まるしかない。だってちゃんと約束して、私だってすっごく楽しみにして、それなのに行きたくないってどういうこと。



「なん…で?」
「は?」
「…なんで、行きたくないの?」



私がそう問えば、トウヤ君は押し黙り、しばらくして「あーもう!」と不機嫌そうに言いながら、髪をくしゃくしゃにして、私の穿いているスカートを指差した。



「スカート、がどうかしたの?」
「どうしても行きたいっつーならそれ脱いでズボン穿け!もしくは…絶対俺から離れんなよ」
「なん…っ」



なんで、と聞き終える前に、言っている意図が分かり赤面する。そんな私の様子を見て、トウヤ君は私の頬を抓ると、手をとり歩きだした。



「まじむかつく」
「…私は嬉しいですけど」
「なんか言った?」
「痛い痛い痛い!握力強すぎでしょ!痛い!ちょ、トウヤ君!」
「うるさい」



と言いながら、ちゃんと手を繋ぎ直してくれる。もう全部照れ隠しだって分かるから。



「トウヤ君。私キーホルダーお揃いにしたい」
「ふーん。勝手にすれば」
「本当は嬉しいんでしょ」
「調子に乗るな」
「やだ。乗りまくるよ」



へへへーと笑いながらそう言えば、トウヤ君は溜め息をついて、私の腕をぐいっとひいた。体制を崩した私は、そのままトウヤ君の元へ倒れ込む。



「…わっ!ん?!」



倒れた衝動で目をつむった時、唇に感じる柔らかい感覚。びっくりして瞳を開ければ、目の前にはトウヤ君の綺麗な顔があって、瞬間、私は顔から湯気が出る勢いで赤面した。



「…仕返し」



唇を離してニヤリと笑ったトウヤ君の色気にくらり、くらり。

くらり。



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