ゆめ | ナノ



物語のはじまりは突然でした。



「なまえ。お父さん、結婚することにしたんだ!」



私が幼い頃から、男手一つで私を育ててくれた父がそう言ったのが3日前。



「実はその人には、なまえの一つ下の男の子の子がいるんだ!」



ずっと一人っ子だった私に、兄弟が出来ると知ったのが2日前。



「なまえ。明日から2人がここで暮らすことになったぞ!」



2人だけだった家に、新たに2つの声が加わると知ったのが1日前。



「こんにちは、なまえちゃん」



そして今日、私に新しい家族が出来た。ずっとずっと小さい頃から、私を一人で育ててくれていた父も、幸せになるときが来た。そう思い、私は少なからず、新しい家族のカタチというものに期待していた。



「よろしくね。ほら、トウヤも挨拶なさい」
「よろしくね。トウヤ、くん?」
「…チッ」



はじめて出来た弟という存在に、私は浮かれていたのだ。名前を呼び掛け、右手を差し出すと、私の弟になるはずのトウヤくんは、私を一瞥してから、なにをするでもなく、ただ舌打ちした。



「舌打ち?舌打ちねえ。これから姉になる私に舌打ち…」



瞬間、私の中でなにかが切れた。私はなにも考えずにこれから弟になるはずのトウヤを殴った。



「いってー!なにすんだよ!」
「うるっさい!仮にも姉になる私に舌打ちとはどういうこと!?ぶっとばされて当然よ!」
「なにが姉だよ、この暴力女!」
「暴力女って…、あんたそこに正座なさい!」



早速ぎゃあぎゃあ騒ぎ出す私たちを尻目に、お父さんとお義母さんは楽しそうに笑って言った。



「なんだか面白そうなことになりそうね」
「そうだな」



そんな会話をしているとはつゆしらず、私と義弟は相も変わらず、言い争いを続けるのだった。



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