思えば、トウコの家に行くのはこれが3回目だ。玄関をくぐりながらそんなことを思った。 「あら、トウコおかえり。なまえちゃんこんにちは」 「ただいまお母さん」 「こんにちは、お邪魔します」 にこりと笑ったトウコのお母さんに挨拶をして、私とトウコは目的の部屋へと向かう。トウコが慣れた手つきでドアを叩いて声を掛ける。 「トウヤー起きてる?入るよー」 トウコの問い掛けに、しばらく間をあけてから小さく、はい、という声が聞こえた。トウコがこちらを見て頷いたのを確認し、私も同じように頷く。そしてトウコに続いて、私はトウヤ君の部屋へと入った。 「…トウコ姉さん?」 目を擦りながら起き上がったトウヤ君は、トウコの後ろにいる私を見て一瞬だけ固まった。でもそのあとはすぐに、いつもの猫かぶりに戻って、問うてきた。 「なんでみょうじさんが…」 「私が連れてきたの」 「どうして?」 「それについては、どうかお二人でお話してくだ…さい!」 「えっ?わっ!」 「ちょっ、姉さん!」 トウコは私の背中を押すと、ドアを閉めて部屋を出ていってしまった。私は背中をおされた勢いでトウヤ君のベッドに、トウヤ君の身体に多い被さるように倒れ込む。トウヤ君はそんな私を一瞥し、閉まったドアを見て言った。 「…トウコのやつ」 そして大きなため息をつくと、私の頭をペシリと叩いた。 「…いたい」 「痛くしてないだろ。お前いつまで俺の上乗ってんだよ」 「わかんない」 「俺、上乗られるより乗りたい派なんですけど」 「!!」 トウヤ君の発言に私はあわてて後ろに飛びのく。そんな私を見てトウヤ君がくつくつと笑う。 「別にそんなにあわてて離れなくても…ふっ」 「だってびっくりしたんだもん!しょうがないでしょ!」 「今のお前の顔、すっげーおもしろかった」 「ううううるさい!」 私がそう叫ぶと、トウヤ君は一層楽しそうに笑った。そんな姿を見て、いつものトウヤ君だと安心したのと同時に、ひざから力が抜けていった。 「みょうじ?」 そんな私を、トウヤ君が驚いた顔で見つめる。次いで思いがけず、涙まであふれてしまい、私は両手で顔をおおった。 「みょうじ、どうした?」 トウヤ君がベットから降りて、こちらに近寄ってくるのが分かった。次いで頭になにかが乗せられて、ポンポンと2回バウンド。そしてぎゅうっと抱きしめられたのが分かった。 いつもそうだ。私が泣いているときのトウヤ君は、いつも優しい。 「…トウヤ君」 「ん?」 そんなトウヤ君のことを、私は。 「好き…」 |