シリアス/死ねた



「うわ、うわああああっ、あ…ああぁああ!!!」

もしも私に感情が無かったら、どんなに良いかと思う。もしも私が人間ではない何かだったら、どんなに良いかと思う。もしも私が可愛らしい犬だったのなら、愛されたのだろうか。愛とは、何なのだろうか。常々思う。もしも、今まで受けてきた仕打ちが愛だと言うのなら、私は涙なんて流さずに、喜ぶべきだったのだろう。もしも、"嫌い"が"愛してる"に変わる愛の言葉だったなら、どんなに私は幸せだったろうか。それらは全て私の妄想であって、きっとこれから先も叶うことの無い夢だ。そう思っていた。偉業を成し遂げれば蔑まれることもなくなった。何もなくなって、そのうち、存在すら無かったことになるのではないか。もっと先の未来で、聖徳太子は存在しなかったと、謡われるのではないか。まあ、それも悪くない。全ての人が、私を忘れればいい。全ての人が、私を知らなくていい。人間の記憶の中に自分がいると思うと、虫酸が走る。

『この度遣随使に任命されました、小野妹子です』

ふと脳裏によぎった中低音の声。思い出したくない、声。
誰だ、随に人を派遣して倭国を栄えさせようとしたのは。そんなことをしなければ、彼に出会わずに済んだのに。ああ、私じゃないか。彼に出会わなければ、人の優しさなど知らずに済んだのに。嫌われようと一生懸命尽くしたのに、彼は私を見捨てようとはしなかった。

『そんな理由で助けてはいけませんか、太子……』

いけないよ。私なんか助けなければよかったんだ。あの時、海に溺れて死んでしまえばよかった。そんな私に、好きだなんて言わないで欲しかった。

『なんで…』
『貴方のことを放っておけるもんですか』
『私は、嫌いだ』
『僕の一方通行でも構いません。傍にいさせてください』
『妹子……、なぁ、好きって何だよ。愛って何だよ』

そういえば、先程から耳が痛い。耳をつんざくような叫び声が聞こえる。これは、私の声だ。

「あああっ、あ、はぁ…うっ、うああっ…!!」

そして、目の前に横たわっている男は、ああ、彼か。

「妹子、妹子おおおっ、」

死んでいる。
私が殺した。
彼が私を好きだと言ったから、こうするほか無かったのだ。彼の頭の中に私が存在したから、こうするほかなかった。


だって私は、
愛しかたを知らない。


私が人から教わったことは、つまり、そういう事なのだ。その通りにしただけなのだ。なのに、なぜこんなにも苦しい。


if
(誰より先に貴方に出会っていたら)
(私は貴方を愛せたのでしょうか?)






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BLACK CAFEの紫音様ことしーちゃんへ捧げます!
嫌われ太子が好きだと仰っていたので書いてみたのですが、なんだか訳の分からないものに…
私の中では、嫌われ太子は病み太子です←

拙い文ですが、受け取っていただければ幸いです。



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この度は相互ありがとうございました!



20110331.

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