じゅうご
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6月のある日。

「あーっ!!」

「どうしたの?」

体重計からよろめいて降りた姉ちゃんが手で顔を覆う。

「ふ、太った……」

「へ」

叫んだと思ったら何を言ってるんだこの人は。姉ちゃんは痩せすぎている方だし、少し太ったほうがいいのだ。

「いいんじゃない?姉ちゃん痩せすぎだし」

そう言うと姉ちゃんはキッと俺を睨んだ。

「……運動部の工くんにはわからないよ」

「いや、客観的に見ても姉ちゃんは細いから」

姉ちゃんは勢いよく俺の手をつかみ、自身の腹部に俺の手を当てた。勢いつけすぎて少し腹部の上の方になる。親指に姉ちゃんの胸が当たる。

「ちょっ!姉ちゃん!?」

「ほら、ポヨポヨでしょ。最近オデブちゃんなの私」

ムスッとした顔で俺を見上げる。あっ、上目遣い可愛いなんて思ってられない。俺の顔は真っ赤だろう。無理に手を払うと余計胸に当たる気がして動けなかった。

「そ、そこ、腹じゃない」

「あっ、本当だ。」

姉ちゃんはうっかりうっかりといった風に少し下に俺の手をずらした。今度こそ姉ちゃんの腹に俺の手がいく。

「いや!問題はそこじゃないから!」

「?。どこかに問題あった?」

「っ!」

姉ちゃんは俺のやましい気持ちなんて気づいていない。俺は「何でもない」と手を払った。

「とにかく、姉ちゃんはダイエットなんてしなくていい」

「……触ってもわからないなら見る?」

姉ちゃんは自身の服をまくりあげようとする。俺は慌てて姉ちゃんの腕を掴んで下に下げた。

「なにやってんの!?」

「ポヨポヨのお腹を……」

「ポヨポヨしてなかったよ!!」

そう叫ぶと姉ちゃんは少し嬉しそうな顔をした。

「……本当?」

ぶんぶん首を縦にふると姉ちゃんは服の袖から手を離した。俺もホッとして姉ちゃんから手を離した。

「でもダイエットはする。甘い物控える」

「まあそれくらいなら……」

「いいんじゃない」と続けようとするも、姉ちゃんはどこかしょんぼりしていた。

「どうしたの?」

「工くんとまたパフェ食べに行きたかったのになあって……」

「っ」

この姉は本当に嬉しいことを言ってくれる。俺は熱くなる頬を見せたくなくて片手で顔を覆った。



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