じゅうに
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「在校生挨拶!」

「はい」

落ち着いた返事をして代表台に上がるのは俺の姉ちゃんで、白鳥沢の在校生挨拶の選考基準がどのようなものか知らないが、恐らく成績で選んでるのだろう。姉ちゃんは役員に入ってない。姉ちゃんはスラスラと祝辞を読み上げていく。隣の男子たちが「あの人可愛くね?」なんて言っているものだから、俺は気が気じゃなかった。姉ちゃんはただでさえ同学年にも人気(白布さん情報)だと言うのに下の学年まで射止めてどうすんだよと姉ちゃんの成績の良さを恨んだ。

じとりと姉ちゃんを睨んでいると姉ちゃんがふとこちらを見てにっこりと微笑んだ。それを見た先ほどの隣の男子たちが何を勘違いしたのか頬を赤く染める。姉ちゃんは俺に微笑んだんだぞ。胸のあたりがモヤモヤした。……小学生のころはこんなこと思わなかったのに。ただ単純に姉ちゃんを見つめてられてのに。自分の成長に少し嫌気がさした。

……

「ただいま」

「おかえり工くん」

玄関まで出迎えてくれたのは姉ちゃんで、「部活どうだった?」と軽く首を傾げる。くそ、そんな仕草も可愛いな!なんて朝の祝辞のことがまだ引っかかって素直に認めたくなかった。

「姉ちゃん、在校生の祝辞さ……」

「?」

なんで引き受けたの?なんて聞いても今更無駄なことが頭をよぎる。俺はそれを言葉にせずに別の言葉に変えた。

「……カッコよかった」

「本当?嬉しい」

へへっと微笑んだ姉ちゃんは最高に可愛くて。そういえば昔は姉ちゃんに抱きついて後頭部を扉にぶつけさせていたなと懐かしくなった。すると姉ちゃんはふふっと笑った。

「?。どうしたの」

「いや、昔は工くん私に抱きついてきたなー……って」

姉ちゃんも覚えていたのかと少し驚いた。俺にとっては姉ちゃんがカッコよかったという記憶と共に覚えていることだが、姉ちゃんにとっては何でもない1日だと思っていた。

姉ちゃんはゆっくり両手を広げた。

「今も抱きついていいよ?」

「は!?」

何を言ってるんだこの人は。姉ちゃんは俺が姉ちゃんを女の人として見てることを知らない。だからこんなことも平気で言えるのだろう。

「やめろよ、もう子供じゃないんだから」

「……そうだよね」

両手をおろした姉ちゃんは少し寂しそうで。俺だって姉ちゃんを抱きしめたいよ。でももう許される年齢じゃないから。

「?。工くんどうしたの?なんだか落ち込んでるみたいだけど」

「何でもねーよ」

きっと姉ちゃんはもう子供じゃない、という言葉の意味をずっと単純に捉えている。俺はあの頃と変わらぬまま、自分の可哀想な恋心に蓋をした


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