優しい木漏れ日、またいつか | ナノ



優しい木漏れ日、またいつか






 ▼ココアと雑誌

本を片手にお気に入りの読書スペースへと腰掛ける。宝石や宝飾品に関しての新しい動向などをチェックする為にと定期的に通っているのは、顔馴染みの店主が経営する書店だ。

「みなきち、俺ジュエリーショップ関係ないのに宝石に詳しくなりそうなんだけど。」
「綺麗だからいいじゃん、心が豊かになるよ?」

温かいココアを盆に載せて持ってきてくれたのは店主であるグリドールだ。客も特にいない時間帯を狙って行くと、時々こうやってゆっくりと話をする。ぺらり、雑誌を捲る音が鳴った。

「これなんだよなー、手作業じゃ量産できないもんなー。」
「どれ?」
「これ。機械でやれば早いけど、なんか冷たくなるっていうか。」

指差したページにある特集は、大きな街の最新機械を使った量産風景。確かにこうすれば沢山の商品を用意できるが、水奈吉の好むぬくもりは得られそうにない。ずずっとココアを啜りながら水奈吉は大きくため息を吐いた。

「まあお得意さんだけ相手するなら今のペースでもいいんだけどね。」
「酒買えなくなるんじゃないか?」
「あ、それは無理だ死ぬ。」

雑誌を勢いよく閉じ、今度は懐から取り出した財布を開く。読み跡がついた雑誌の代金を支払って立ち上がる。

「今度何か奢るよ、おじゃまー。」

軽く手を振って店を後にし、今日の夕飯はどうしようかと帰路についた。


* * *
他愛ない日常と、穏やかな時間。
(レンタル:花梨さん宅グリドールさん)
(水奈吉/シャワーズ♂)









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