優しい木漏れ日、またいつか
▼Sleeping you
銀の板を削り出し、形を作り、やすりをかける。ジュエリーショップとは銘打っているものの、宝飾品以外も手掛けている故に作業は膨大だ。指輪ひとつにしたって、採寸通りに作らねばロスが出る。趣味ではなく仕事として手掛ける以上、無駄は出してはいけないのだ。
「……こんなかな。」
出来上がったパーツを手にとって照明に透かせば、鈍くも淡い光が照り返す。アクセサリーを作るときの喜びはこれだ。形が徐々に本物になる。疲れもなにも吹き飛んでいくのが分かる。 台座を用意すれば、残るは主役。引き出しを開けると目に飛び込む色とりどりの宝石たち。ガーネット、アメジスト、真珠にエメラルド。どれもこれも自慢の商品だ。 彼はじっと宝石を見つめて、銀の台座に見合う色を探す。ひとつひとつ手に取り、台座と並べ、そしてまた引き出しに戻す。納得がいくものを探すのもまた、楽しみである。
「やっぱりオニキスがいいかな、うん。」
光すら吸い込むような黒を台座に嵌め込み、水奈吉は大きく頷いた。小ぶりのオニキスが銀色の中で静かに居場所を主張する。まるで、眠っていた魅力が目を覚ましたかのように。 少し照明に翳して全体を確認し、満足が行く出来を確認した。我ながら上等な代物を作ったものだと自画自賛し、店舗の商品棚に並べる。
「さって!開店時間だ!」
勢いよく扉を開けて、看板を引っくり返す。現れたopenの文字を指差すと鼻唄混じりに店の中へ姿を消すのだった。
* * * 開店準備。 (水奈吉/シャワーズ♂)
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