優しい木漏れ日、またいつか
▼春風
吹き抜ける風は、まるで全てを浚ってしまいそうにも感じた。スカートが強く揺れる。スカートを押さえつけて視線を上げれば、木々も恐々と揺れ続けていた。
「貴方達は大丈夫ですよ。」
答えが返ってくるはずがないのに、声を掛けずに入れなかった。遅い昼食の帰りとはいえ、陽はまだ高く空に雲一つない。いや、雲は風が奪い去ってしまったのかもしれない。 そんな時、はたと足が止まる。ここ最近空なんて見上げていなかった。温度を感じることも忘れていた。芽吹き始めた新緑は、桜の桃色と混ざり合って優しげな色をしている。そんな木々が目いっぱいに手を広げるかの如く、青い空へ向かっていた。気付けば、もう、春色だ。
「……桃色と緑色、とても素敵なコントラストです。次回の仕入れに考案してみるのも一興ですね。」
指で額縁を作りながらその風景を目に焼き付ける。風がまたひとつ、強く吹き抜けた。
* * * 春色爛漫。 (ラウ/★デンチュラ)
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