優しい木漏れ日、またいつか
▼蜂蜜色の街灯
陽も落ち、街灯がぽつぽつと点灯し始めた時間。水奈吉は一日の業務を終えて鼻唄まじりに街路を歩いていた。夕飯の買い出しである。いつもなら適当に済ませてしまうが、何となく翌日が休みとあって手の込んだものを作ろうと思ったのだ。
「あら、水奈さん?」 「ん?」
呼ばれた気がして振り向いた。そこにいたのはびりびりエリアで蜂蜜専門店を営む莉子だ。彼女の手には財布が握られている。
「莉子だ、どっかいくの?」 「夕飯の材料をちょっとねぇ、足りないものがあったのよぉ。」
少し間延びした喋り方を聞いていると、少し落ち着くのは彼女の性格ゆえだろう。自分より少しばかり背の高い莉子をじっと見ると、水奈吉はにんまりと笑って彼女の袖を軽く引いた。
「ぼくもこれから夕飯なんだけどさ、一緒に何か作らない?」
莉子は驚いたように目を見張るが、やがて蜂蜜が蕩けたような笑顔に変わる。その表情は独り立ちした息子を見る母親のようなものだった。
「水奈さんも遂に自炊するようになったのねぇ〜、なんだか嬉しくなっちゃうわぁ。」 「いや、たまにやるから。……まあ、面倒だからよくさくらのところで食べちゃうけどさ。」
水奈吉はばつが悪そうに鼻を掻く。夕飯を一緒に食べたら昨日買ったばかりの上質な清酒でも御馳走しようと画策しながら。
* * * 実は休業日が違うだけで営業時間は一緒な店主×2。 (レンタル:琴音さん宅莉子さん) (水奈吉/シャワーズ♂)
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